駄文置き場のブログ 2nd season

□ 本編 『In The Forest』(完結) □

In The Forest 24

第24話



「牧野…お前一体どうして…? それに、何で類と居るんだ?」
「え…えっとそれは…」

どう答えようか考えたとき、3人の目の前でエレベーターの扉が開く。
救いの神とばかりに、つくしがそれに飛び乗った。
類ものんびりとそれに続く。

「お…おい!」
仕方なしに総二郎もそれに乗ると、扉が閉まる。

「お前なぁ…」
「ごめん、西門さん。今日は急いでるの。悪いんだけど…」
「なら、連絡先は?]

エレベーターが1階に付いた途端、飛び出しかねないつくしの先手を打つ。
類は壁に寄り掛かり腕を組んだまま、2人の間に口出しをしない。
つくしは鞄から名刺を取り出すと、総二郎に手渡した。

「天草法律事務所…弁護士…?」
「まぁ…一応。似合わないって言いたいんでしょ?」
「…否。らしいなって思ってさ」
「え…?」
「それよりこの携帯、仕事用なんだろ?プライベート用のを教えろよ」
「何言ってるのよ。携帯2個なんかお金掛かっちゃって…持てるわけないでしょ?」
「なんだ。相変わらず勤労処女かよ…」
「なっ…!」

笑う総二郎に真っ赤になるつくし。
エレベーターのドアが開くと「とにかく行くから」と、駆け足気味に地下鉄の方へ向かって行った。

「あーあ、忙しない奴だな…」
心底可笑しそうに言う総二郎の脇を類が通り過ぎる。

「で、お前もそのまま行く気かよ?」
「………なに?」
気怠そうに類が振り返る。

「何で牧野と一緒に居たんだ。態々こんな場所で」

総二郎も別の場所で会員制茶房の会員となっているが、そこはデートというより、商談や一人物思いにふけるときに使うもの。
実際、総二郎があの場に居たのも仕事で、相手がここの会員だったという訳だ。

「……別に。仕事だと思わないの? 牧野は弁護士なんだから」
「……仕事……ねぇ……」

総二郎が手にしたつくしの名刺を弄ぶ。
類もそれ以上は口を開かない。
降りてきた類の姿を見つけた田村が近付くと、総二郎が手をひらひらさせた。

「ま、今日の処はいいわ。近いうちに会おうぜ。
あきらも今、日本に居るっていうから、声かけてみるわ」
「……そ……」

それだけ答えると仕事の顔に戻り、田村の方へ顔を向ける。
総二郎も店の前に回された車に乗り込んだ。
車が静かに動き出した処で、手にした名刺に目を落とす。
飾り気のない、文字のみが書かれた、何処にでもあるもの。


英徳大学に進まなかったつくしの元に、類が足繁く通っていたことは、総二郎もあきらも知っていた。
一度だけ、冷やかしに訪れたことがあるが、目にしたのは学食で参考書を開くつくしと、その隣で珈琲を飲みながら経済誌を捲る類。
英徳の非常階段で見た、穏やかな雰囲気に似た光景に、声を掛けずに戻って来た。

司の記憶喪失では、散々苦しんだつくし。
記憶が戻らずニューヨークに行った司を何時までも思っているより、今の方がよっぽどいい。
類の家にも様々な『問題』があることは知っていたが、何か手は打っているのだろうと考えていた。

ところが蓋を開けてみれば、類はフランスへ行ったきり。
つくしも知らない間に弁護士になっている。
その2人が揃って居るのが『単なる』仕事とも思えない。


総二郎にとってつくしは、『女』ではなく『友人』
人間としては好ましく、好きか嫌いかで言えば好きになるが、そこに色恋沙汰はない。
先程目の前に居たつくしは、ごく普通のスーツを身に纏った、色気も素っ気も無い姿。

-否、牧野にしては『色気』が出た方か?
そんな考えが過り、俺も焼きが回ったものだと苦笑する。

学生の頃とは異なる華やかさを放っていたつくし。
それは服装や薄い化粧ではなく、もっと奥にある…強いて言うなら『本質』のようなもの。
かつて総二郎が相手にしてきた女達とは、全く異なる色香。
様々な経験を越えた者が持つ、強さとしなやかさ。


「…全く…何があったんだか…」

思わず出た言葉。
そのことにどんな意味があるのか?
まだ総二郎自身も気付いてはいなかった。


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