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駄文置き場のブログ 2nd season

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パラレル時代劇『お江戸でござる! 壱』

Category - 捧げもの
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総二郎! お誕生日おめでとう!(^^)!
こちらのお話は『柳緑花紅』の河杜花様に(無謀にも)お贈りしたお話の再録となります。


河杜花様の素敵サイトは、こちらからどうぞ…(^^)

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時は江戸。
徳川の狸爺が東の国に幕府を開いて200と十数年。
浦賀の沖にはペルリなる異人が現れ、京の都よりは天子様の御妹君が江戸の家茂公のもとに降嫁され、江戸の町ははすったもんだの大騒ぎ。
やれ攘夷だ、やれ開国だのと、血気盛んな若者も大勢集まる、花のお江戸。

そんな中、のんびり廓の一角で休んでいるのは、この男……。





「総さん…。総さん…。起きておくれなんし…。…朝でありんすよ…」

心地良い廓詞に総二郎がゆるゆると目を開ける。
飛び込んで来たのは、江戸、新吉原の中でも1.2を争う遊郭、柳緑楼の一番花魁、杜花。
総二郎は緩慢な動作で起き上がると、ひとつ大きく伸びをした。
首をゆっくり回す総二郎に、杜花は三つ指をついて礼をする。

「総さん。昨晩は…」
「ああ、いいっていいって。俺も楽しませて貰ったし?」
慌てて杜花の顔を上げさせる。

「…少し寝過ぎた…。…悪かったな、杜花」
「いいえ…。またいらしておくれなんし…」

総二郎が立ち上がり着物を簡単に整えるのを、そっと杜花が手伝う。
とっくに卯の刻(午前6時)は過ぎており、本来であれば店を出に居てはならぬ時刻。
それを、総二郎の眠りを妨げることをよしとしない杜花が、己の度量でこの時刻まで起こさずに居てくれた。
そのことに礼を述べると、杜花も艶っぽい笑みを浮かべる。
支度を調えた総二郎が、近くに立てかけてある杖を手に、遊郭を後にする。
共に大門まで出た杜花は、その後ろ姿が大門から見えなくなるまで見送る。


昨晩、柳緑楼に来たのは、どこぞの礼儀を知らぬお大尽。
金子と肩書きにものを言わせ、一番花魁である杜花を突如として指名する。
廓遊びの粋を知らぬそのお大尽に、杜花の馴染みである総二郎が指名し、追い返した。
が、総二郎は床に入っても、酒を飲み只横になるだけ。
その理由は、杜花とて知っている。

「ほんに…つれないお人でありんすねぇ…」
小さくなる背中に向かい、ぽつりと呟いた。





着流し、杖を肩に担ぎ、ぷらぷらと歩いていた総二郎が向かったのは、品川宿の問屋『牧野屋』
その暖簾を潜ると、奉公人達が一斉に頭を下げる。

「お帰りなさいまし。頭」
「おう。頑張ってるな」
軽く手を挙げ履き物を脱ぎ、奥へと行こうとする中、番頭席に座る男が、帳簿から目を離さずにぽつりと呟く。

「白粉が着いてる。…また廓遊び?」
「……ったく…一々五月蠅ぇな、類は」
「五月蠅くもなるよ。…全く、牧野はこんな男の何処が良いんだろ?」
しれっとしたまま、パチパチと算盤を弾く。


総二郎と類は幼なじみ。共に元は『武士』である。
それが今や、問屋の頭と番頭。
元々武士であることに何の意味も見いだせなかった2人。
それがちゃきちゃきの問屋の一人娘、つくしを見初めたことから、華麗なる争奪戦が繰り広げられ、見事総二郎がつくしと夫婦となり、入り婿としてその跡を継ぐことになった。
…のだが、何故かそこに番頭として、類もくっついてきた。
曰く、「牧野が総二郎に愛想尽かしたら、いつでも俺のところに来られるように」とのこと。
実際、商才は数字に強い類の方があった。
ならばいっそ、類が頭になれと総二郎は言うのだが「そんな面倒で、割の合わないことヤダ」の一言で切り捨てる。

実際、『牧野屋』が問屋として栄えているのは、しっかり者のつくしと、番頭である類で切り盛りしているお陰。
婿となった総二郎は、仕事をする気は殆どない。というよりゼロ。
女を見れば老若美醜にお構いなく「おねえちゃん、あちきと遊ばない?」と決め台詞をやる事で有名であり、何を言われても暖簾に腕押し。
けれど何故か人を引きつける力を持ち、有事の際、総二郎が声を掛ければ東海道中の雲助(人足)が集まると言われている。

そして何より…
ぱたぱたと奥から軽い足音が響く。


「旦那様、お帰りなさいませ」
「………お。……今帰った……」
にっこりと笑うつくしの姿に、総二郎の顔が僅かに赤くなる。


結婚をする前は、やれ一晩で女20人切りだの、廓を渡り歩いただの、散々言われていた総二郎だが、結婚後
-正確には、つくしを見たときからは、それがぴたりと止んだ。
今日のように、廓に足を伸ばし花魁と床を共にすることはあっても、決して手は出さない。
そのくらい、つくしに惚れ抜いているのである。
だがそれを知るのは幼なじみの類と、馴染みの花魁、杜花くらい。


つくしの笑顔に気まずくなったのか「ひとっ風呂浴びて寝るかな…」と口の中で呟く。
そのまま奥に行こうとした総二郎に、類が再び声を掛けた。

「そういえばさっきあきらが来た。…なんか話があるって」
「……ふーん……」
総二郎の眼が、一瞬嶮しくなる。


あきらは南町奉行所の定町廻り同心で、総二郎、類とは同じ同場に通った剣術仲間。
その腕前は甲乙付けがたく、お互い「あいつとは斬り合いはしたくない」と言っている。
とはいえ師範の免除を持つのはあきらのみ。
総二郎は免許皆伝の腕前ながら、しがらみが面倒とそれを持たず、類に至ってはかなりの我流。
今は町人であることから、帯刀が許されない総二郎は杖に剣を仕込み、類は鉄扇を所有しているのだが、それを知る者は少ない。


「また…厄介事か……?」
ぽつりと総二郎が呟いた。




次の更新は卯三つ時(06:00)でござる~



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