駄文置き場のブログ 2nd season

□ 捧げもの □

パラレル時代劇『お江戸でござる! 挿話零(エピソード・0)』

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こちらのお話は『柳緑花紅』の河杜花様に(無謀にも)お贈りしたお話の番外編となります。



河杜花様の素敵サイトは、こちらからどうぞ…(^^)

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時は江戸。
世間では色惚け爺と言われた12代将軍が逝去し、議論されているのは13代将軍を飛び越え、次の公方様のこと。
紀州の慶福(後の家茂)公か、水戸の慶喜公か?
尤も江戸の町中は、天下人が誰であろうと関係ない。

そんな輩も、ここに3人……。



「お前ら、いい加減真面目にやらないと、お師匠さんが倒れるぞ」
道場からの帰り道、あきらが年長者のように告げる。
言われた2人は何処吹く風。
総二郎は「はいはい」と軽くいなし、類は聞かないふりでスルー。

同い年のこの3人は、江戸に住む武家の子息で、同門の仲間。
真面目なあきらは既に師範代だが、総二郎も類も稽古には出たり出なかったり。
何とも嘆かわしいと泣く師匠を宥め、幼馴染を説得するあきらは、二十歳になるかならぬかという年齢にも関わらず、既に中間管理職のようだ。

五月蝿いな…と、思いつつ片耳であきらのお小言を聞いていた総二郎は「そうだ」と口を開きそれを遮る。

「今日はこのまま、新吉原に行こうぜ。
振袖新造(※1)で1人、見処があるのが居るって言ってたなぁ…」
昨日寄った廓で花魁から聞いた話をすると、お小言がピタリと止む。

基本、真面目なあきらだが、まるっきりの堅物という訳ではない。
寧ろその逆。廓では有名な2人組だ。
逆に類は「興味無い」の一言で切り捨てる。

お小言から話題が変わりほっとする中、とある店の一角で、大きな声が上がる。
どうやら男が町人に言い掛かりを付けているようだ。
普段の総二郎達であれば「関わるのは御免」とばかりに無視して行く処だが、騒ぎの中から突如、鈴を転がすような声が響く。

「これだけ謝っているじゃないですか! もういい加減にして下さい!」
凛とした声に、総二郎の興味がそちらに向く。
騒ぎの方へ足を向け、人混みを掻き分け中の様子を見ると、怒り狂う下級武士と平謝りする町人の男。
そしてその2人の間に割って立つ、一人の娘。

きちんと結い上げられた潰し島田。
年の頃は十七・八といったところか?
生娘らしい色の着物は、一介の町人にしてはかなりの上物であることから、大店の愛娘という処だろう。
そして何より大の男、それも下級とは言え武士を相手に一歩も引かぬ、気の強そうな瞳。

-面白ぇな…
周りの野次馬に混じり様子を眺めていると、類やあきらも追い付いてきた。

「へぇ…随分粋のいいお嬢ちゃんだな」
「…凄…」
2人もまじまじとその様子を眺めている。

騒ぎの中心人物である下級武士は、立ちはだかる娘を相手に引くに引けず、刀の柄に手を掛ける。
平謝りしていた町人は勿論のこと、娘の方も流石に顔色は青くなったが、それでもその場を動こうとしない。

刀が抜かれる。
誰もがそう思ったとき、この場にそぐわない、のんびりした声が響く。

「止めときな。女相手に刀を抜くなんて、野暮の極みだろ?」
「だっ…誰だ!」
「…その程度の腕前じゃ『切捨御免(※2)』は無理だね」
「なにっ!!」
「何があったか知らないが、刀を抜いたら『終わり(※2)』だぜ」

顔を向ければ長身の男が3人。武家の、しかも手練れの様子。
どう見ても分が悪いと、下級武士の男が一瞬怯むが、それでもまだ柄から手を放さない。

「…あーあ、まだやる気だけど、どうする?」
「…町中で抜刀は不味いぞ」
「刀なんて要らないでしょ? あの程度じゃ」

のんびり3人が会話する中、問答無用で男が総二郎達の方へ斬りかかって来る。
刹那、3人が素早く動いた。
総二郎が相手の銅を鞘で打ち、類が懐から鉄扇を取り出し男の後頭部を撫でるように打つ。
よろめき倒れた男の腕をあきらが踏むと、抜かれた刀を奪う。

「…お前等、やり過ぎだって」
「刀は抜かなかっただろ?」「扇で撫でただけだよ」
「…総二郎の銅と類の鉄扇喰らったら、普通の人間は死ぬぞ…」
やれやれとばかりにあきらが呟くと、足下の男へと眼を向ける。
どうやら息はあることから、2人ともそれなりに『加減』はしたようだ。

「…と言う訳だ。
今日の処は見なかった事にするから、早いところ立ち去った方が良くないか?」
刀を鞘に納めそれを差し出しながらあきらが告げると、男は急いで立ち上がり、一目散に逃げて行く。


一瞬の静けさ。
の後に、周囲から起こるどよめき。

「お武家様方、ありがとうございました。つくしちゃんもありがとう」
町人の男が立ち上がり、頻りに礼を述べると同時に、先程まで間に入っていた娘にも礼を述べる。

「…つくしちゃん…?」
総二郎がつくしと呼ばれた娘の方に目をやると、つくしは相変わらず突っ立ったまま。

「…お嬢ちゃん…?」
「…………………………」
総二郎がつくしの肩にぽんと手を置くと、へなへなと座り混む。

「おい! 大丈夫か!?」
「………吃驚した………」
ぺたんと腰を付けるのは、安心し気が抜けからだろう。
先程の勇ましい姿は何処へやら、ほっと息をつき呟く姿が何とも可愛らしく、思わず総二郎が笑い出す。

「……笑わないで下さい……」
「否、悪い悪い」
口では謝りながらも、総二郎の笑いは止まらない。

「たっ…助けて頂いたことにはお礼を言いますけど…。笑うなんて失礼です!」
キッ、と睨む強い眼に、思わず総二郎の視線が釘付けになる。



-それが、総二郎の中で半鐘が鳴った瞬間-





その後、紆余曲折を経て、つくしが総二郎の妻になるのは、これより3年後のこと。
それはまた、別のお話……。







-挿話零 了-



※1 振袖新造
15-16歳の遊女見習い。禿(かむろ)から花魁になる前の段階で、多忙な花魁の名代として呼ばれることもあった。
(但し、床入りはしない)
振袖新造となるものは格の高い花魁となる将来が約束されていた。


※2 切捨御免
武士の名誉を守るために与えられた特権。
…ではあったが、刀を抜いても相手に逃げられると『不名誉』となり、場合によっては切腹しなければならなかったので、実際にはそうそう行われることはなかった…らしい。







はい、恒例、やっちまいましたシリーズ。
こんなのを4話も花様に押しつけた不届き者でございます。
暴れん坊将軍が居たならば「成敗!」の一言ですな…(^^;)
更に調子にのって、この挿話零まで押しつけたという。
もう、獄門ものですね…。

江戸時代パラレル、個人的には楽しんで書かせて頂きました。
もうちょっとアクションシーンを派手にしたかったのが本音ですが、
総二郎を『居合い斬りの達人』にしてしまったため、
瞬間芸になってしまいました。(^^;)

江戸時代の設定やら廓詞、
色々調べたつもり…ではありますが、
何分専門外なもので、いい加減な部分も多々ございます。
毎度恒例、ここだけ設定でお許し下さいませ…<(_ _)>

気が向いたらまた何処かでお目に掛かるやも…しれません。
その際には、どうぞご贔屓に…<(_ _)>

最後に、判りにくかった諸設定をUP致します。


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