駄文置き場のブログ 2nd season

□ 本編 『In The Forest』(完結) □

In The Forest 26

第26話



茶房を出た2人はさも当然のように並んで歩く。
待ち合わせの店はそう離れては居ないが、そこそこ歩く微妙な距離。
つくしは勿論、歩くつもりでいたが、類も同じ方向へ足を向けたことに少々驚きつつ、何処かで納得をする。

-そういえば…散歩、好きだったしね…
目線だけ、隣を歩く男に向ける。

只でさえ周りを歩く人々より上背のある類は、街中を歩けば目を引く。
それに加え人目を惹く容姿と雰囲気。
周りの人々殆どが、擦れ違う度類に視線を向ける。

学生時代、類と並び歩いたときにはよく見た風景。
当の類は視線に気付いているのかいないのか、何処吹く風。
かなりゆったりと歩いているのだが、普通に歩くつくしとそう変わらないのは、単なるコンパスの差だろう。

「…牧野」
「…………へ…?」

擦れ違う、サラリーマン風の男性とぶつかりそうになったつくしの肩を引き寄せる。
気付いた時には類の胸元辺りが、つくしの目の前にあった。

「ぼーっとしてると転ぶよ」
「あ…ありがと…。…って、子供じゃ無いんだから…!」

慌てて類の身体から離れる。
類も特に気にするでもなく、再び歩き出す。
思いがけない行動にどきりとしたつくしも、気を取り直し後に続いた。





「つくしーーーー!!」

教えられた店に着き名前を告げると、通された個室。
その扉を開けた途端、つくしは滋にしがみ着かれた。

「ちょ…滋さん…?」
「つくしーーー!! 会いたかったよーーーー!!」

アタフタするつくしを余所に、滋は腕を緩める気配がない。

「滋さん。いい加減にしないと、先輩が窒息しちゃいますよ」
「だって…」

窘める桜子の言葉に多少腕を緩めたものの、それでもつくしを離そうとはしない。
有無言わさず、滋の隣に連れて来られる。
目の前には、総二郎とあきら。隣に類が座る。
精悍さは増したものの、変わらない人当たりの良さを醸し出すあきら。

「久しぶり、牧野。弁護士になったんだってな」
「美作さん。久しぶり。うん、一応ね…」
乾杯の後、皆の質問はつくしへと向かう。

「丁度商談であきら君の所に行ったら、ニッシーがつくしに会ったって言うんだもん。吃驚しちゃった。
いつ弁護士になったの?」
「えっと…3年前。大学卒業してから受かったから」
「そっかー。あ、つくし。うちの顧問になってよ!」
「あ、滋さん。狡いですよ。それを言うなら私だってお願いしたいですわ」
「え…と……」
滋と桜子、両側からスピーカーで言われ、何と返していいのか判らず言葉を濁す。

「お、それなら俺の処も頼もうかな? つくしチャン」
「つくしチャン言うな」
「…駄目だよ」
わいわい騒ぎ出す滋達の会話を、黙って酒を飲んで聞いていた類が口を開く。

「牧野は俺と顧問契約してるから」
「え…ええー!? ルイルイ! どういうこと!?」

類に掴みかからん勢いの滋には答えず、後は任せたとばかりにつくしに視線を送る。
つくしは内心ため息をつくと、口を開いた。

「う…ん。実はそうなんだ。ごめんね。滋さん」
「そっか…じゃあ仕方ないね…。
けど、ルイルイのとこやめたらうちに来てよね」
明るく滋が答える。

類と顧問契約をしている以上、他の大手企業
-あきらや滋の処との顧問契約を受けることは出来なかった。
弁護士として、得た情報の守秘義務はある以上、別に他に受けた処で法的な問題はない。
要はつくし自身の気持ちの問題なのだが。
それは類達にしても同じようで、彼等はすべて別の弁護士が顧問となっている。
立場のある企業人、社会人として、秘匿すべきことは多々ある。
例えそれが旧友であっても。

「それよりさ、つくしは今どこに居るの? 優紀はどうして来てないの?」
暗くなりかけた場の雰囲気を、滋が新たな話題で変える。

「あ…優紀、今、看護師でね。今日は夜勤なんだって」
「へー、優紀ちゃん。看護師なんだ。何処の病院?」
「もしかして、兄貴んとこかよ」
「そういえば転職するって言ってた。
何か今の処、夜勤スケジュールが滅茶苦茶だって言ってた」
「なんだー。つくし、その病院、訴えちゃえば?」

酒の量も進み、皆が饒舌になってくる。
最初来るのを躊躇っていたつくしにも、笑顔が溢れていた。


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