駄文置き場のブログ 2nd season

□ Le père Noël 【2016 Noël】 □

Le père Noël 第5夜 ② -りおりお-

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第5夜 ②

「星野さん・・・急で申し訳ないのですが、私の代わりに櫂様と北海道出張に行って貰えませんか?」
「えっ? 私がですか?」

突然、そう言われたのは12月19日の事
出張は21日からで、第一秘書が同行する予定になっていた

「実は、妻の実父の容態がおもわしくなく、万が一の事もある為、ここから動けなくて・・」
と申し訳なさそうに告げる

そう言われると、断れない
確かに、万が一の事があれば、直ぐに駆けつける必要があるだろう

「分かりました。それでは、同行させて頂きます」
そう告げる莉緒に、ホッとした表情を見せる第一秘書だが、実の所、櫂から頼まれての事だ

櫂と莉緒は、順調な交際を続けている
といっても、ここ最近、やっとフレンチキスが出来るようになったくらいだ
それでも、顔を真っ赤に染め、挙動不審になる莉緒の姿に、櫂自身驚く程だ

そして物を欲しがらない事にも気が付いた
アクセサリーはもちろんの事、洋服や小物に至るまで・・・
莉緒の事を知れば知るほど、好きになっていく自分を止められず、内心戸惑う程だ

そして今年のクリスマスも、きっとディナーで充分と言うだろうと考え先手を打つ事にした
21日22日の札幌出張に合わせ、そのまま北海道でクリスマスを過ごそう・・・と

今年のクリスマスイブは土曜日
その前日は祝日になり、出張を兼ねて4泊5日の北海道旅行が出来る
そう考え、すぐさまパソコンを開いた所、目に飛び込んだのが函館だった

前もって莉緒と二人っきりと伝えれば、変に身構えられても困るし、自然の流れを装った旅行・・・と言う訳だ


櫂の元に、コーヒーを持ってきた莉緒に、櫂は笑顔で尋ねる
「もう聞いた? 出張の事」
「はい。 事情が事情ですし、私が代理を務めさせていただきます。
でも、無事務まるかどうか不安で・・」

「それは何も心配いらない。 莉緒は、俺の隣に座っているだけで良いから。
じゃあ、そのままクリスマスは北海道で過ごそうな」
「えっ?」

出張が終わり次第、直ぐ帰ると思っていた莉緒は、思いの外、大きな声をあげた
しかし、櫂の方は想定内の反応を示す莉緒に、余裕の笑みを返す

「23日が祝日で24日は土曜日だろ?
って事は、日曜日に戻れば、仕事に差し支えないしさ。
それに莉緒は、物を欲しがらないだろ?
だから今年のクリスマスは、北海道のイルミネーションをプレゼントさせて?
あっ、もちろん部屋は二つ用意するから心配いらない。
そりゃ俺としては、一緒の部屋に泊まれたら嬉しいけどさ・・・その辺は、莉緒に任せるからさ」

そこまで言われると、直ぐに帰りたいとは言えない
しかも、部屋も別々で良いとまで言ってくれる
記憶が無いまでも、この3年という月日を、親身になって支え続け、嫌がるような事は何一つしない
逆に、こちらが申し訳なくなるほどだ

それに普通なら、とっくの昔に好きになっても良いはずの相手なのに・・
なぜか心にセーブがかかる
それが不思議でならない

時々フラッシュバックする映像と声の男性が、関係しているのでは?と思うのだが、目の前の恋人である櫂に、その事実を打ち明ける事も出来ず、ずるずると月日だけが過ぎている

それならこのクリスマスイブに関係を望むなら・・・
もう一度、チャレンジしてみようか?
もう一歩踏み込めば、何か変わるかもしれないし、丸三年も辛抱強く待っている櫂との関係も、大きく変わるかもしれない・・・と思い至った

「はい。 素敵なクリスマスにしましょうね」

笑顔で返す莉緒に、櫂もホッとした
そして二人は、21日早朝の便で北海道へ旅立った




無事仕事を終えた二人は、23日早朝から、電車に乗って函館へ向かった

「莉緒に見せたい物があるんだ」
「えっ? 何?」

「それは、着いてからのお楽しみ。 それより・・・まずは腹ごしらえだろ?」
「あっ、分かった?」

「もちろん・・・何年お前の彼氏をやってると思ってる?」

櫂は、わざと交際期間を強調する
そうする事で、もう少し莉緒の心を開かせたい狙いだ

もちろん、莉緒もそれを感じ取っていた
櫂が、この旅行中に深い関係を求めている事を・・・
それでも、以前の約束を守り、決してそう言う言葉を口に出さない事も・・・
そしてその誠実さを感じていながら、どうしても一歩を踏み出せない自分が居る事も・・・

とにかく今は、旅行を楽しみ、そう言う雰囲気になれば、流れに任せて見よう・・・と思い、気持ちを切り替える

「海鮮丼が食べたいな」
「だろうと思った。 じゃ海鮮丼の店へ行こう?」

こうして二人は、腹ごしらえの後、函館の五稜郭のライトアップを見る
それは、大きな雪の結晶の様でとても綺麗だ

「きれい・・・」

感嘆の声を上げる莉緒の唇に、櫂はチュッと軽いキスをする
それだけで莉緒は頬を染める

「明日は、もっと凄い物を見せてあげるから、楽しみにしてろよ!」
「何? これ以上に素敵な場所があるの?」

「あぁ・・・スッゴイ良い所。 楽しみにしてな!」
「うん」

こうして23日は過ぎていった



***

類は、田村と共に12月23日早朝の便で、シャルル・ド・ゴール空港からフランクフルト経由で、24日の昼前に東京に着いた
そこで田村と別れた後、今度は国内線に乗り換え、函館へ向かった
予定より30分遅れで到着したが、それでも16時30分だ

そこから一度ホテルにチェックインを済ませ、直ぐに金森赤レンガ倉庫前へ向かった
クリスマスイブと言う事も有り、車も混雑している

類は、少し離れた所でタクシーから降り、歩いて向かう事にした
その道すがらの街路樹も、イルミネーションが綺麗で、パリの街並みを彷彿とさせる
そしてかなりの人が行き交っており、一人で歩いているのは類ぐらいだ
その類の遥か先には、キラキラとしたツリーが見える

類は、右ポケットの中に手を入れ、指輪に触れる

今回は、俺一人だけど・・・
来年こそは、一緒に見ような・・・

あんたならきっと、ポカンと口を開けて「きれい・・・」と、一言呟き、ジッと見つめるんだろうな
でも・・・俺もそうだと思う
それぐらい・・・すごく綺麗なツリーだよ?

そう思いながら、一歩一歩ツリーに向かって歩を進めていた



***

「きれい・・・」

莉緒は、ツリーの前で、上を見上げながら感嘆の声を上げた
その隣で、櫂は思った通りの反応に、笑い出しそうな所を必死で堪える
そして、そっと窺い見ると、口をポカンと開け身動き一つせず、魅入っているのが分かる
その莉緒のキラキラ光る瞳に、櫂も魅入られてしまう程だ

櫂は、声をかける事無く、莉緒が眺めているツリーに視線をやる
そうしながらも、この後の予定を考えていた

ディナーの場所も既に押さえている
そして、物を欲しがらない莉緒に、敢えてプレゼントを渡そうと決めている
それは、このクリスマスと言う特別な雰囲気と、三年と言う付き合いから、莉緒自身にもう一歩踏み出して貰う為
口に出しては言えなくても、そうする事で俺の本気を判って貰う為

櫂は、コートの上からそっと右ポケットに触れる
そこにある、小箱に勇気を貰うように・・・・・



莉緒は、ツリーを見上げながら、先程から何度もフラッシュバックする断片的な映像と声に驚く
そこには、自分自身の姿と声も混じっていたからだ

「凄い綺麗だね。 それに・・・ほらっ、見て見て! スープバーがあるんだって
とっても美味しそうだよ」
「・・・・・花よりダンゴなんだ・・・」

クスリと笑いながら告げる心地良い声
その声は、何度も聞く声

「・・・・じゃあ・・・今年の冬、一緒に行こ?」

その彼の声に嬉々としている自分・・・
そして、鼻歌を歌いながら、カレンダーに丸を付けている自分が居る

莉緒は、ツリーから視線を外し、そっと横を覗えば、スープバーの屋台が並んでいる

誰かと並んで、テレビでこの風景を見た?
誰?

それは櫂さんじゃない事だけは確かだ
と言う事は、櫂さんの前に付き合っていた人?

と、思考を巡らせていると、フッとツリーの点灯が消える

「えっ?」
と、莉緒は驚きの声を上げる

「あぁ・・・このツリーは、15分後にカウントダウンで再点灯するんだ」

櫂はパソコンで調べた情報を説明し始める
莉緒の方も、先程までのフラッシュバックがピタリと止まり、櫂の話に耳を傾けた

すると・・・
何処かから懐かしい香りが、莉緒の鼻孔をくすぐる

それは・・・柑橘系の香り・・・


途端、莉緒の心臓がどきどきし始める

一体、どこから?
と、莉緒はキョロキョロ周りを見渡すが、沢山の人が行き交っている
それに点灯が消えたツリーの周りは、人の影は分かる物のその顔までは暗くて見えない

ただ、無性に心臓が締め付けられるような、そんな感じが続いている

「莉緒? お腹空いた?」

気もそぞろと言った莉緒の様子に、櫂はお腹でも空いたのだろうか?と声をかける

「あっ・・・えっと・・・香りがね」
「あぁ・・・スープバーの良い香りがするよな。 ここ寒いし、スープでも食べて温まろうか?
一緒に買いに行く? それとも、この場所を確保しておく?」

イルミネーションが消えた事で、立ち止まっていた人達が、一斉に動き始め、微かに匂ったあの香りも、今はもうしない
でも・・・
足が根を張ったように動かない

「ううん。 ここで待ちたい」
「分かった。 じゃ俺が買ってくるよ。 ここを動くなよ」
「うん。 分かった」

莉緒は手を振り、櫂を送り出す
そして櫂は、莉緒の頭にポンポンと手を乗せた後、スープバーの屋台へ向かった





Prochain → Aujourd'hui 16:25


↓おまけつきです♪

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Information

Date:2016/12/24
Comment:4

Comment

*

あーーくぅ~~っ❤
すっごく良いところでっ❤(#^.^#)
...って思ってたら、まさかの3話目っ!?笑笑❤
りおさんなんて素敵なクリスマスプレゼントでしょうっ❤❤(//∇//)
そしてますます気になる管理人は誰だ!?笑
続きも楽しみにしておりますね~❤♪ヽ(´▽`)/
2016/12/24 【凪子】 URL #- 

*

うぅーーー 寸止め♪
次いってきまーす♪
2016/12/24 【asuhana】 URL #- 

*

凪子様
更なるコメント有難うございます
小話にも書きましたが、本当にこうなる予定では無かったんです。
でもプロットがね、、
その通りに書き始めた所、二話で終わらなかったんです
で、怒涛の三話目(-_-;)
管理人さんに頭を下げ、なんとか三話目もOKもらいました
是非楽しんで下さいね
2016/12/24 【りおりお】 URL #- 

*

asuhana様
すみませ~~ん(>_<)
本当に終わらなくって
でも次回で終わらせます
そしてラストの人にきちんとバトンを渡して来ますので、楽しんで下さいね
2016/12/24 【りおりお】 URL #- 

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