駄文置き場のブログ 2nd season

□ Le bouquet 【2017 Anniversaire】 □

Le bouquet 第2話 -凪子-

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第2話



*


「…つくしさん//!」


ここは上野駅公園口 ―――――


目があった途端、自分に向けて懸命に手を振る嬉しそうな海の姿に、つくしもどこか暖かい気持ちになる。


「…ごめんね?待ったかな…」

「いえっ//ちょうど時間、ぴったりです//!」


一点の曇りもない晴れやかな笑顔...

この子は何処に居たとしても
きっと周りには、いつもこんな風に穏やかな空気が流れているのだろう…

つくしはふと、そんな事を思った。


― フフッ、なんか、癒されるかも...



何の取り柄もないこんな平凡な自分を
あの時 海は、好きだと言ってくれた。

一生懸命な気持ちのこもった『告白』に
どこか自分はほだされたのかもしれないという
気持ちもある。


それでも...

司との激しい恋が終わった後に、

つくしの心の中に住まう"ただ一人の男"は
やはり決して、手の届く人では無くて...


そんな時、優しくて誠実な海の存在に
つくしは癒されたし、素直に嬉しいと感じた...

だから...

― こんな風に穏やかに始めてみるのも
良いかもしれない...


そう思ったら自然と、海の手を取っていたのだ。



そしてつくしが海と付き合うと決めた日から、
今日が初めてのデートの日。

動物園デートというのが、
また何とも海らしくて微笑ましい。

電車で待ち合わせ場所に向かう時間も
つくしの心の中は、ここまでとても穏やかだった。


*


「…それじゃ、ぼちぼち行きますか//!?」

「うん!あたし動物園なんて久し振りだな~」

「あ//、俺もです//!」


― そうだ、うん…
今日は思いきり海くんと楽しもう...

そうしてつくしは
水色の澄んだ二月の空に降り注ぐ明るい陽射しの中…海と共に並んで、園内に足を踏み入れる。




「ねぇねぇっ!パンダだよ~!」

「あ、ホントだ!行ってみましょう//!」


休日にしては、程々の人混み...

その中で、ガラス越しにごろんと寝転ぶパンダの姿を二人で眺めては、可愛いと感想を言い合う。


すると

「でもパンダってなんか、狡いですよね//、ずーっとああやって寝てばっかりで、可愛い可愛いって言ってもらえるんだから…」

「あはは!そうだね、ずーっと寝てばっかり…」

「只の寝坊助なのにそれだけでみんなに愛されるなんて...人間でもこんな1日中気持ち良さそうに寝てる人が居たら、きっと幸せだろうなぁ...//」


― 幸せそうに眠る人、かぁ...

そういえば…非常階段でいつも寝てたな...

案外今も、そうだったりして...


「…つくしさん?」

「…へ?…あぁ、ごめんごめん!うん!確かにパンダは狡いかもね」

「フフッ、ですよね//…、でもそれでつくしさんにあんなに可愛いって言って貰えるなら…俺もずっと寝てようかな//…」


海のいじらしい言葉に
何故かズキンと感じる胸の傷み...

つくしはそれを誤魔化すように
慌てて言葉を重ねる。


「やだ何言ってんのよ!働き者の海くんが寝てたんじゃ、うちの花屋は回らないっつーの!」

「あ//そうですね!…俺、つくしさんの為にもバリバリ働きますから//!」

「ハハッ、ありがと!…いつも助けて頂いてます!」

そうして海に向けて精一杯の笑顔を送れば、
海も爽やかな笑顔を返してくれる。

― うん、楽しいな…
何も不安になる事なんて、無いんだから...


ほんの一瞬だけ思い出した男(ヒト)の事など、
所詮今の自分には、もう過去の出来事...


そんな想いを振り払うように、
つくしは前へと駆け出した。


「ねぇねぇっ!ほら、今度はあっち行こう!?」
「えっ、あ!そんなに急いだら…」

「キャッ//!」
「危ないっ//!」

慌てて蹴躓くつくしの身体は
倒れるすんでのところで海に支えられる。


「…つくしさん//…大丈夫?」

「アハハッ//…ごめんね、ありがと!…全く//...
年上なのに助けて貰ってばっかで、あたしったらしょうもない//」

「そんな風に言わないで下さい//!」

「...え...」

思いがけなく発された海の強い響きに
振り返れば


「…年上とか年下とか//…そういうの、関係無いじゃないですか///...
俺達もう、付き合ってる訳だから///...」

「…あ…えっと//...そう、だよね//…」

海の熱い想いを目の前に、
つられてつくしの頬も赤らんだ。


― そうだよね//...付き合ってる、か...


その時、スッと目の前に差し出された 大きな手...


「手//...繋いでもいいですか///?」

「…あ...うん…」


「良かった//...つくしさん、危なっかしいから//…」

照れて笑って見せる海の優しさに、
つくしの心も和む。


― 「繋いでもいいですか?」…なんて...
海くんらしいや...


「…じゃ///」
「…うん//…」


その時

繋いだ手の感触に覚える、僅かな違和感...


― …あれ?...そっか、あったかいんだ...
海くんの手は...


いつか繋いだ事のある 自分より大きな手は

いつでも、少し冷たくて...



―『クスッ、牧野の手はあったかいんだね…』


バカ...

何でまた、思い出すのよ...


「…つくしさん?次、どこ行きます?」

「あ//、うん!えっとねー...」


― 今日は海くんの事だけ考えるって、決めたじゃない…


浮かぶ想いを打ち消すように...

隣に並ぶ海の手をギュッと握れば…
海は少し意外そうにしながらも、
嬉しそうに笑みを返した。


「じゃ、あっちのぞうさん見に行きましょう//!」

「あ、うん!見たい見たいっ!…ていうか海くん、『ぞうさん』って…フフッ//」

「え///?あれ///?言いません///?…おかしいな///…」

照れる海が可愛らしくて...

顔を見合わせて、二人で笑い合う...


― 楽しい、とっても...



そうして笑い合いながら、動物園を歩いて回る。
海と共に過ごす、穏やかで楽しい時間...

瞬く間にそんな二人の時間は過ぎていき
まもなくランチタイムを迎える頃...


*

「…あ~っと、そろそろお昼ですけど...つくしさん
食べたいものとか…」

「あ、それね!あたしお弁当作ってきちゃったんだけど...良いかなぁ//」

「えっ///!マジで///!?」

「うん//…貧乏臭いかなとは、思ったんだけど//…」

「なっ//!何言ってんですか//!つくしさんのお弁当なんて//超嬉しいですっ///!」


― フフッ、海くんったら...//


きっと彼に尻尾があったなら、今ブンブンとつくしに向けて、千切れんばかりに振っているのだろう…

繋いだ手から未だ伝わる緊張に、
つくしも思わず頬を緩めた。


「…ありがと//...じゃ、食べよっか?…
味に保証は出来ませんが...//」

そのまま近くのベンチに座り、二人して
つくしの作った弁当を広げる。


「うわぁ~//感激だなぁ//...じゃ、頂きます//!」

「どうぞ、召し上がれ」


嬉しそうに弁当を見つめる海に、
自然とつくしの心も弾んだ。

が、

「俺、卵焼きが一番好きなんですよね//」


― え...


大きな手に持つ箸先が、
黄色の卵焼きに真っ先に伸びたとき...


ドクン...


不意に生まれた自分の中のデジャブと共に
つくしの心臓が大きく跳ねて...

海の食べる様子を
いつの間にか、じっと見つめていた。


「…ど、どうかな...」


― 嫌だな...あたし、今...上手く笑えてる?...


目の前でモグモグと口を動かす海は、
素直に感想を口にする。


「…あ...うん//…甘いんですね...」

「え?」


「いや//…自分の家の卵焼きはしょっぱいからちょっと吃驚して//...
あ//!でも勿論この甘いのも美味しいです//!」

「...あ…そ、か...ごめんね...」


― 嫌だな...あたしったら、何動揺してんのよ...

急に元気の無くなったつくしを見て
自分のせいだと思ったのか...

海は慌てて

「あ//!ほら//!…男でも甘い卵焼きが好きな奴って意外と居るし//…でもホントに美味しかったんで//…良ければまた作って下さい//、甘い卵焼き//!」


その言葉に
またもつくしの脳裏に浮かぶ、懐かしい記憶...



―『ね、これちょうだい?』

―『牧野の卵焼きが食べたい…』


モグモグと嬉しそうに、
つくしの卵焼きに箸を伸ばす『天使の微笑み』...


最低だ...

あたしは誰を想って、今日このお弁当を...


振り払っても振り払っても
コントロールを出来ない自分の気持ちと、

純粋に自分を想ってくれる海への罪悪感に...


気付けば


「…ちょっ//つくしさんっ///?」

「え?…あれ...嫌だな//...あたし、何で…っ」

ポロリと溢れた涙の粒に、
つくし自身も動揺してしまう。


― 別に、泣きたい訳じゃないのに...


「…ごめ…別に、海くんが悪い訳じゃないから…」

必死に泣き止もうとすればする程、
次から次へと溢れてくる涙...

そんなつくしを、海はただじっと見ていた。




「…誰か...思い出したんですか?」

「…違っ//…そうじゃなくてっ///...」


慌てるつくしに
見えないところで、海はフッと軽く息を吐く。

そして...


「…これ、使って下さい」

つくしが恐る恐る見上げても、海は変わらぬ優しい笑顔で、そっとハンカチを差し出していた。


「…ごめんね…ありがと...」


― どうしよう//…なんて言い訳すれば...

こんな自分にも変わらない海の優しさに
ズキリと感じる傷みと、
泣いてしまった自分をどう取り繕おうかと
焦るつくしの耳に、再び...


「…構いませんよ、俺…」

「え?」

「俺はどんなつくしさんでも、好きなんで…」


― 何...言ってるの...海くん...


驚いて顔を上げたつくしの唇に

突然海から、
触れるだけのキスが落とされた...





Rendez-vous demain...


↓おまけつきです♪
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Information

Date:2017/03/24
Comment:6

Comment

*

凪子様
おはようございます。
凪子様もチームルイルイに参加され、類くん好きとしては読み応えがさらにアップしてとても嬉しく思っています(*^^*)
拍手ページも拝見しました。私もネット?機械??音痴なのに、偶々見つけた花男二次にハマってしまい、最初は「拍手」や「ナイス」すら押すと何が起きるのか!?と怖くて押すことが出来なかった人です(笑)
海くんいい子ですね~。類くんと出会う前なら自然に好きになったかもしれませんね…。普通に考えたらこんなに優しくて素敵な彼氏さんは居ないですよね。
でも、海くんの何気ない一言、手のあたたかさ、味の好みを知るたびに類くんを思い出し比べてしまう…。どんなに海くんがいい子でも、自分の気持ちをコントロール出来ない。物凄く物凄く類くんが大好きなんだなと伝わってきて切なくなりました(>_<)
パンダと類くん…確かに人気者で寝てばかり。そっくり!と思って笑ってしまいました(笑)
次はどなたでしょう。ワクワクドキドキしながら、明日の更新を楽しみにしています(*^_^*)
2017/03/24 【ノエノエ】 URL #- 

*

こんにちは(・∀・)ノ
わ♪ノエさんもそうだったんですね!笑
ボタンとかお気に入り登録とやらは…もう、何か罠なんじゃないかとすら思ってましたよ(^^;爆笑
そして、はい♪憧れのチームに入れていただき、書き手さんになってまた幸せを噛み締めております❤ご存知だと思いますが、皆さん優しいんですよ~❤❤
そしてお話♪パンダ類♪お気に召して頂き嬉しいっ❤&実は海くんにはモデルが居りますので、今回そのイメージ全開で行かせて頂きました♪優しいでしょー♪…でももちろん『類誕のお話』ですからねっ❤笑
あの方が、きっと素敵な類をプレゼントしてくれる筈っ❤❤
さて、お次はどなたでしょうか?
どうぞ最後までお楽しみ下さいね(*^^*)
どうもありがとうございましたっ♪
2017/03/24 【ノエさん♪】 URL #SolvHBHw [編集] 

* お疲れ様😆🎵🎵

凪子様💓
2番手は凪子さんでしたか😆
お疲れ様〜👏
つくしちゃんは類君の事が忘れられないのは分かるけど、類君は?
海君も優しくていい子なんだけどね…
類君はいつ頃どの様な登場の仕方なんだろう⁉
お話しも気になるし、次はどの作家さんかもドキドキ😍💓で…
チームルイルイ素敵なお話しを書く作家さんばかりなので、と*て*も*楽しみにしてます
2017/03/24 【キム】 URL #- 

* キムさん♪

今晩は(・∀・)ノ
はいー、2番手は凪子でした!( ̄- ̄)ゞ
うふっ♪気になりますよね?
ここでの類くんは、まだつくしの中の思い出なので...今の類くんはいつ登場するのか、そしてどなたに続くのか❤❤楽しみにお待ち下さいませ~(*^^*)
どうもありがとうございましたっ♪
2017/03/25 【凪子】 URL #SolvHBHw [編集] 

*

凪子さんこんにちは。
忘れられない人というのはきっと、どこへ行っても何を見てもその人を思い出してしまうんですね…
パンダを見て…よくわかりますが(笑)
こんなに思い出してモヤモヤするなら、なんでっ!って思わせるのがつくし。
つくしの気持ちになり私もモヤモヤさせてもらい、早く類君に会いたくて恋い焦がれています~
完結した後なのに今頃コメントすみません!
2017/04/03 【ずき】 URL #- 

* ずき様♪

いえいえ~❤
コメントありがとうございます!!
うふっ♪類パンダ…❤
共感して頂けて嬉しいです(*´ω`*)❤笑
記憶の中の類… とびっきり優しく、柔らかく、きっとつくしの中で色褪せないであろうと思いますので…♪
なかなか書いてて海くんが可哀想になっちゃったんですけどね(^^;
勿論、類が一番ですから❤❤!( ̄- ̄)ゞ笑
一緒につくし気分になって頂けて良かったです♪どうもありがとうございましたっ♪
2017/04/04 【凪子】 URL #SolvHBHw [編集] 

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