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駄文置き場のブログ 2nd season

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Le bouquet スピンオフ④ -凪子-

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スピンオフ④


―『じゃ//海くんごめんね//…後は宜しくお願いします//!』


そう言って、嬉しそうに恋人の元へと向かう
つくしの眩しい笑顔が脳内を過りつつ...


―― 今日も店仕舞いか... お疲れさん、俺...


程よい疲労感と共に
ガラガラと、海は店のシャッターを降ろす。



『すみません…こちらに牧野つくしという女性は居られるかしら?』

突然かけられた声に、顔を向ければ


――― うわっ… 凄い美人......

夜の闇の中に
まるで人形のように美しく整った小柄な女性が一人...
それはそれはにこやかに、佇んでいた。


「あ…えっと...」

しかし答えかけて、海は躊躇する。
よく見れば、目の前の女性は高級そうな服を身に纏い、頭から爪の先までかなり洗練された、まるでどこぞのお嬢様のような出で立ち...
いつもジーパン姿で飾らないつくしとは、全くもって正反対のその身なりに…
海は僅かに、その女性に警戒心を抱く。


――― もしかして... あの彼氏の元カノとか......?

有り得ない話ではない。
いや、仮に…あれほどつくしに一途な男の「元カノ」では無くとも、あのパーフェクトな容姿に加えて高スペックの男で、かつメディアに出るほどの有名人となれば、ストーカーの一人や二人居ないとも限らず...となれば、つくしが危ないのではないかと思い当たる...。

咄嗟にそう判断した海は、


「…そんな女性は、当店には居りませんが…」

少しばかり厳しい口調で女性に告げると


『…嘘…ここに牧野つくしが働いて居るのは、既に調べがついているんです//!…だってようやく此処で働いて居る事を突き止めて…//』

「…ちょっと待って下さい!...今「突き止める」って//」

『ハァ、貴方では埒が飽きませんわ...「三条桜子が訪ねてきた」と、早く牧野先輩にお伝え下さるかしら!』

そう言って、シャッターの閉じかけた店内を半ば強引に覗きながら、幾分興奮した『人形』の頬が紅く染まる。


― ん......?


「…あの、今『先輩』って...?」

『ええ…わたくし牧野つくしの高校の後輩ですの...』

そう言って再び取り繕いながら、緩くカールされた艶のある巻き髪を優雅に耳にかける女性...。
「後輩」というにはどこか偉そうなその態度に...
まだ怪しさは拭いきれないが、しかしどういう訳か彼女から、ある種の『必死さ』は伝わってくる...


「…ホントに?...あの、例えば牧野さんに、危害を加えようとか、そういうことは…」


すると、

『まっ///!…なんでわたくしが//今更先輩に危害を加えなければいけないんですか///!?…もう結構です//!…勝手に中を探させて頂きますから///!』

「…えっ、ちょっと!」

そうして興奮したお嬢様が店内に入ろうとするのを、海は慌てて引き留めた。


「あの!!」

『何ですっ//!?』

「...すみません//つく…いや、牧野さんなら、今日は先にあがりましたよ?」

『…えっ』


その一言で、お嬢様の捜索はピタリと止まる。


― へぇー...案外素直なんだな...


しかし


『…何で、それを早く... ハァ...』

海の言葉に、一気に意気消沈してしまった彼女の様子に...やや申し訳無いという気持ちも湧いてくる。

「…えと…すみません//…その、もしかしたらあなたが、つく…いや、牧野さんの彼氏の、ストーカーかと思って…」

『はっ//!?…今なんて仰いましたの//!?』

途端に今度は、突然美しい顔でツカツカと詰め寄られ、そのあまりの勢いに、海はホールドアップの姿勢をとる。

「…っと//、ですから、俺の勘違いで…」

『そうでなくて//!…先輩に//今「彼氏」がいらっしゃるのですか//!?』

何をそんなに慌てて居るのかはともかく...
どうやらつくしに対してかなりの「好意」を持っていそうな彼女の必死な様子に、海もついうっかりと

「居ますよ。ほら、あっちの向かいの…」

花沢ビルを指差した。

すると

『...まぁ//...
ではお相手は...花沢さん、でしたのね//...』

フッと…
まるで強固に纏っていた鎧が、脆く剥がれるように、素の『喜び』とも思える表情が、彼女に拡がってゆき、海は暫し、それに見とれた。

「…あの//...」

しかし、

『もうっ//全く…それならそれで桜子に仰って下されば良かったのに//!…全く先輩はいつまで経っても水臭いですわっ///…』

声をかける前に、今度はまるで小さな子供がやきもちを妬くような拗ねた表情に変わり...
その変化に思わず海も


「…プッ//!」

『//何ですの!?さっきから貴方は//...しかもレディを前にして噴き出すなんて、本当に失礼だわ//!』

途端にもとの毅然としたお嬢様の振る舞いに戻った彼女に、更に笑いが込み上げる。


「ププッ//…いや、すみません//...その//…ホントに好きなんだなぁ、と思って//…つくしさんのこと//…」

『な//!何を仰ってるのかさっぱりわかりませんけど//!それに//元はと言えば貴方のせいで//…』

ツボに入ってしまった海の笑いが、どうやら彼女の怒りの火に油を注いでしまったようで...、海は慌ててこみあげてくる笑いを押し止めた。


「…いや//、ホントにそれはごめんなさい//…始めは、ホントにあなたみたいな人がつくしさんの知り合いなのかな、って思ったんですけど…、でもやっぱりそうなんですね//…よくわかりました//…」

そう言ってにこにこと邪気の無い笑顔を向ける海だが、桜子はその言わんとする所が理解出来ず

『あの…どうして私が、本当に先輩の友人だと信じたのかしら?』

いかにも怪しみながらも、僅かに首を傾げる仕草が、やっぱり素直だと思った。

だから


「フフッ、なんか、似てるから…」

そう言うと、
何故か美しい顔が耳まで紅く染まる。

『なっ//!冗談じゃありません///!何でわたくしが、先輩なんかと///!…』

そうしてブツブツと文句を言いながらも、明らかに喜び照れている様子に…思わず微笑ましくなり、海はつい声をかけた。


「あの、良かったらこれからお茶でもしません?」

しかし、

『…!?』

途端に桜子の視線が強い警戒心を持ち、
再び鎧を纏おうとする。
その間際に

「…あ、すみません//勘違いしないで下さい、別にナンパとかでは無いので…」

いきなりお茶を誘った時点でそう捉えられても当然なのだが、それでは困ると、海は慌てて否定した。


「その...貴女はあれですよね?せっかくつくしさんに会いに来たのに、居なかったらもう、帰られるだけ…とか...」

『…それが何か//!?』

「…いや、だったら俺もその、つくしさんの事//一緒に話したいな…なんて… 今日はちょっと、フラれたばりでなんだか見せつけられちゃって…一人で、居たくなかったっていうか...」

初対面の女性に、一体何を話しているのか…

自分でもよくわからないが、あきらかに『つくしが好き』だと思われるこの女性には、何故だか素直に今の気持ちを吐露しても良いような気がした。

すると

『まぁ、そうでしたの...』

ふと目の前の女性の口から、同情にも似たため息がこぼれ落ちる。

海は慌てて

「…あ!すみません//、別に同情して欲しかった訳じゃなくて…、つくしさんが幸せならそれで
良いとは思ってるんです//!…でもまだ、気持ちが『好き』っていうか…自然に忘れられるまでは、まだ『好き』でいてもいいのかな…なんて//」

―ま、望みなんて
これっぽっちも無いんですけどね//

そう言って爽やかな笑みを向けられ、
桜子は柄にもなく、頬を染めた...


『…では、貴方は初対面のわたくしと、ただ先輩の事を語り合いたいと?』

「ハハッ//、まぁ、そんなところです…」

恐らく根が素直な青年なのだろう...
一点の曇りもないその澄んだ笑顔は、何処かつくしを思い出させた...

桜子は改めて、目の前の青年をじっと眺める...

F4のような特別な部類には入らなくとも、彼は彼で、なかなかのイケメン枠には入りそうだ。

『貴方は、このお店の店員さんかしら...』
「いや、只のバイトですよ?」

サラリと言って退けて、
邪気の無い笑みをまた桜子へ向ける。

その微笑みに何故かドキリとしてしまったのは、
直感で、彼がつくしと同じ人種だと感じたからだろうか...


― 花屋のアルバイト...

普段の桜子ならば、全くもってお茶を飲む相手の選択肢にも入らないようなその相手に、なぜだか今日は気紛れに、暫く付き合ってみてもいい...
そんな気持ちに傾いていた。

だから

「…そういう事でしたら、お茶くらい付き合ってあげても宜しくてよ」

精一杯のプライドで、わざと上から物を言ったのに

『…お!やった!…ハハッ、ありがとうございます』

目の前の青年は、素直に喜びの表情を見せる。

別にその笑顔に
『ときめいた』訳では無いけれど...

今日はつくしに会いにここまで来たのに...
何だか変なことになったと思いながらも、それほど悪い気はしない。


そんな時


「あ、ちなみに俺、一応つくしさんの元カレなんで…」

『えっ…何ですって//!?』

「だから一応、もう復縁は有り得ないって事で」

何とも言えない人の良さそうな笑顔を、
また向けられる...


― ...変な男...//

そう思いながらも、満更でもない自分が居ることに、桜子は気付かない。


一方、海の方では...
何故かさっきまで感じていた憂鬱が、目の前の彼女とのやりとりで、いつの間にか無くなっている事が、素直に嬉しかった。



「…お待たせしました!じゃ、行きますか?」

『あの…最近の先輩の事も、色々教えてくださるんでしょうね?』

「はい、俺でわかることなら…ん?…ていうか、どうして桜子さん、俺を信じたんですかね?」

今更何を言っているのだと思いながらも、
飄々としたその男の態度に、素直に好感を覚える。


『そりゃ、わたくし人を見る目だけはありますから…、貴方って、なんか馬鹿正直そうですしね…』

「プッ//…言うなぁ…、ハハッ、でも当たってます」


海にとって、桜子の歯に衣着せぬ物言いが、
なぜか今の自分には心地好い。


『殿方は時に押しの強さも必要なんです。そう言うところ、花沢さんにもかけてらっしゃいましたけど…、ま、今回はだいぶ頑張られたのでしょうね…』

「はぁ、そういうものですか...」

自信のあるその物言いからは、やはりつくしとの付き合いも古く、ごく親しい友人関係だったことが伺い知れる...

が、

『だったら女性も…つくしさんくらい素直であるべきですよ』

咄嗟に口から出た言葉に

『っ///!…それは//…わたくしに対する当て付けですの//!?』

「あ!そうじゃなくて…、その、桜子さんも、さっき素直に笑ったとき、綺麗だったから…」

海にとっては、先程感じたありのままの、
素直な言葉だったのに...

自分の発言に、この人形のように整った女性から、いかにも人間らしい感情が読み取れることが、今は素直に楽しい...。


『だからもっと、素直に笑ってたらいいんじゃないですかね...』

言った途端…
まだ瞼の裏に映る眩しい笑顔に、ツキンと少しばかり胸が痛んだ。

正直まだまだ、つくしの笑顔は忘れられそうにない。

それでも、まだ恋ではなくても...

こんな風に新しい一歩を始めてみるのも、いいかもしれない...

そんな不思議な気持ちを感じながら...

暖かな春の風が吹き抜ける、
3月の夜だった。





fin


↓おまけつきです♪
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