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駄文置き場のブログ 2nd season

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In The Forest 39

第39話


志朗や顧客との食事を終え帰宅したつくしの耳に、携帯電話の鳴る音が届く。
表示を見ると、最近増えた名前の一人。

「西門さん? どうしたの? こんな時間に?」




バイクにもたれ掛かるようにして総二郎が立っていると、軽い靴音が辺りに響き渡る。
慌てた様子で降りてきたつくしは、スーツ姿に薄化粧。
部屋着にスッピンだとばかり思っていた総二郎は、思わずそれを口にする。

「なんだ? 牧野。夜遊びか?」
「ちょ…っ…夜遊びってね…。
クライアントと食事して、今帰って来たばかりなの。
大体がまだそんな遅い時間じゃありません」
少しむくれたように言うつくしに、「そうか…」と柔らかい表情を向ける。

「西門さんこそどうしたの? バイクだなんて珍しいし…。何か困った事あった?」

先日の集まりにしても、声を掛けてくるのは大抵が滋か桜子。
男性陣側だとあきらが調整役のことが多く、
総二郎が直接つくしに連絡をすること自体が珍しい。
電話に出てみれば、今自宅の前に居るという。
携帯を手にしたまま窓に駆け寄ると、つくし部屋に向かって手を振る総二郎の姿。
慌てて1階まで駆け下りてきた。


「ん…ちょっとな……」

類と別れた後、一度家に戻った総二郎だったが、気分的にすっきりしない。
アルコールが入っていないことから、バイクを引っ張り出し、思わずここに来てしまった。

「西門さん…?」

街灯と月の明かりの下、はっきりと映し出された訳では無いが、総二郎の表情は何処か浮かない。
珍しく歯切れの悪い総二郎の返答に「あのさ…」と声を掛ける。

「良かったら上がってお茶でも飲んでいく? あ、お抹茶はないけどね。
それに…部屋、散らかってるけど…」
何の気なしに言うつくしに、思わず総二郎が苦笑を浮かべる。

「お前な。そう簡単に男を部屋に上げるなよ。襲われたらどうするんだ?」
「お…襲う?」
素っ頓狂な声を上げる。

「声、デカい」
「あ…ごめん…」
慌てて口に手を当て、声のトーンを落とす。
その仕草に総二郎が笑顔を向けた。

「ま、いいわ。今日は帰るよ」
「え…? 何か用があったんじゃないの?」

つくしは総二郎に何か困った事があり、『弁護士』としての自分に用があったのでは? と思っていた。
なのに総二郎は、ひと目つくしを見ると帰ると言い出す始末。
思わず首を傾げる。

その様子に気付いたのか否かは判らないが、総二郎は言葉通りバイクに跨がり帰ろうとする。


「悪かったな、呼び出して。部屋、戻れよ」
「うん。直ぐそこだし、大丈夫。それより、西門さん。本当に何もないの?
困ってる事があるなら、相談に乗るけど…?」

総二郎が来た理由が、法律相談だと思っているつくしから出る言葉。
まるっきり無防備なつくしに対し、ヘルメットを被り掛けた手を止め、顔をつくしの方へ向ける。

「なぁ、牧野」
「なに? 西門さん」
「…結婚しねぇか? 俺と」

沈黙。
の、後に、奇声。

「………………はぃい!?」
「…なんつー声を上げてるんだよ」
「ごめん………じゃ…なくて、なに? どうしたの? 結婚? だれが?」
「…お前、人の話聞いてたのか?」 
「き…聞いているけど…な…何…? なんで…??」
急にゼンマイ人形のように、奇抜な動きを始めるつくし。

「別に変でもないだろ? 
お互い『清いお付き合いしましょ』って年齢でもねぇし?
この年だったら結婚も視野に入れるのは当然だろうからな」
「結婚? 当然って言ったって…」
「俺は結構、牧野のことは好きだぜ。牧野は?」
「そ…そりゃまぁ…嫌いではないけど…」
「ならいいんじゃね。やたらな閨閥結婚よりいいだろ?」
「閨閥結婚…ってね…。…西門さん達にならあり得るんだろうけど…
じょ…冗談でしょ? 今までの全部」

総二郎の表情は普段通り淡々としていて、とてもプロポーズをしている人間とは思えない。
何処かに皆が隠れていて、新手のドッキリかと思ったつくしは急に挙動不審になり、辺りを見回す。
が、勿論、近くには2人の他は誰も居ない。
更には…

「否、本気」

急に真剣な表情になり、返事をする総二郎。
つくしも『嘘…?』と言い掛けた言葉を呑んだ。

再びの沈黙。
総二郎が深いため息を付く。

「そんな顔すんな。何も今直ぐここで返事をくれって言うんじゃ無い。
考えておいてくれ」
「あ…の…?」
「…来てくれるなら、牧野。お前の事は必ず守る。
だから余計な心配はするな」
「西門さん…?」
「……それから、俺のこと故意に避けるなよ。
お前の返事が、どんなものだとしてもな」
「あの…でも…」
「ホラ、部屋入れ」

アタフタするつくしを、部屋に入るよう促す。
言われるまま、ハイツの階段の処まで行くつくしを見届けると、自らもヘルメットを被った。

「じゃあな。また」

そのままエンジンを掛けるとバイクは動き出す。
闇の中消える総二郎の姿を、つくしは呆然と立ちすくみ眺めていた。



※ 総二郎バイク免許の設定は、日本ドラマ版を使用しております。ご了承下さい。


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