Comedy

Comedy 1話 plumeria






「類・・・これはなんだ?」

俺が見たものは一枚の紙・・・そこに書かれた4本の線。
端を折り曲げて類が嬉しそうに持ってきたけど、こんなもの今まで見たことがねぇ。

「これ?牧野に教えてもらったアミダくじって言うヤツ!これで順番を決めるんだってさ。
これなら公平でしょ?・・・どうする?デートの順番、これで決めてみない?」

妙に笑顔の類に、ド真剣な目つきのあきらそして余裕ぶっこいてる総二郎。
こいつらがやるってもんをこの俺がやらねぇとは言えないだろう!
机の上にトンと置かれたその紙を俺たち4人が一斉に見つめて・・・その線の先を各自が押さえた!
4人の眼が光る!全員がこの指先に全神経を集中させた!
そして類がハシゴ模様を辿っていって・・・自分の場所ってもんが決まった!後はその紙をめくるだけってことか?


「司・・・指が震えてるぞ?どうした?」
「なんでもねぇよ!ふ・・・震えてなんかいねぇよ!」

「じゃあ、みんないい?・・・開けるね?・・・せーのっ!・・・」

類が一番下の紙を勢いよく開いた瞬間、俺の指の先の数字が眼に飛び込んできた!

「「「・・・・・・一番が司?」」」

「はっ!・・・悪いな!牧野はこの俺様がもらった!一発で落としてやるぜ、ざまぁみろ!!」


「バカじゃないの?順番が一番なだけなのに」
「指だけじゃなく足まで震えてたぜ?」
「お手並み拝見でいいんじゃねぇの?手が繋げるかどうかのレベルじゃね?」

なんとでも言え!とにかくこの俺様が全力で押しまくれば大抵のことは何とかなる!
この道明寺司、悪いが誰にも負ける気はしねぇ!ってか、敗北なんて言葉は俺の中には存在しねぇ!


********


あいつらと別れて大学の廊下を歩きながら考えた。

でも、ちょっと待てよ・・・デートに誘う?この俺様がデートに誘うとすればどこだ?
あのなんとかランドを貸し切るか、それとも銀座のあのビルを貸し切るか・・・
どっちにしても一般人と混じってのデートじゃつまらねぇだろう・・・それとも一気にアメリカに飛ぶか?

とりあえずここは牧野を誘うことから始めねぇといけないんだが初めの言葉からわかんなかった。
もう少しあきらや総二郎をみときゃ良かったか?・・・でも、同じようなセリフで誘うのは性に合わねぇ。
そう思ってたら正面から鼻歌交じりで機嫌良く歩いてくる牧野を見つけた!

ここはもう正面から体当たりしていくか・・・当たって砕けろ!そんな言葉があったよな!


「よぉ!牧野、ちょうど良かった。今度の土曜に俺がお前の好きなところに連れて行ってやるよ!一緒に来い!」

「なんで私があんたとどこかに行くのよ!別に好きな所なんてのも特にはないわ。・・・じゃあね!道明寺!」

「ちょ・・・ちょっと待て!なんだ、その言い方は!この俺様が誘ってるのに・・・いや、そうじゃなくて!
俺がお前と2人でどっかに行きたいと思ってんだよ!どこがいいか決めさせてやるから・・・だから付き合え!」

「変な誘い方ね・・・・・・いいわよ。公園でいいなら一緒に行ってあげる。道明寺と高い買い物なんてお断りだから!
どう?そんなところでもいいの?あんたが行かないような場所だけど」


は?・・・公園?・・・公園って何があるんだ?
そんなところに行ってどうすりゃいいんだ?まさかそう来るとは思わなかったが、断ったらせっかくの一番がっ!

「いいだろう・・・牧野がそこがいいなら、俺は公園だろうが草原だろうが付き合うぜ!」
「相変わらずだね!またそっちから連絡して?場所は私が考えとくわ・・・じゃあ土曜日にね!」


と・・・とりあえず約束は取り付けた!
予定とはかなりズレた感はあるがこれで牧野に体当たりするチャンスは出来たってわけだ。
あいつらに何かと聞くことは出来ねぇ・・・そうすりゃ、これを聞くのはコイツしかいないだろう!


「西田、大至急お前に聞きたいことがある。すぐに俺の所に来い!いいか、すぐにだ!」


********


土曜日・・・牧野と待ち合わせたのは江戸川区にある、とある自然公園。
なんでここが希望かはわかんねぇけどここの入り口で待ち合わせていた。

時間は午後1時。随分前についた俺は入り口で牧野を待っていた。


『司様、女性との待ち合わせであまりにも早くに待ってるのはがっついていると思われます。それはモテない男のすること!
女性が着いたと同時に、お前も今来たのか?って感じで現われるのです。その時には必ず輝くような笑顔で・・・
よろしいですか?まずここで一発落とすのです!』

西田がそう言ってたな・・・と言うことは早く来すぎた俺はどこかに隠れる・・・そして牧野が来たと同時に出るんだな?
そう思って牧野が来ると思った方向と反対側の建物の陰に隠れてその時を待った。

午後1時ちょうど・・・何やってんだ?約束の時間に遅れるとは・・・まさか来ないってんじゃないだろうな!
そう思って少し身体を前に出したらいきなり後ろから声をかけられた!


「何やってんの?道明寺・・・他に誰か来るの?」
「うおっ!!なんだお前、どっから来たんだよ!」

「どっからって・・・駅から歩いてきたらあんたがコソコソしてたんじゃないの!」

西田の言う一発目はあっさりと砕かれた!


***


今日の牧野はいつもより可愛いんじゃねぇか?・・・やっぱりこの俺とのデートだからコイツも張り切ってんだな!
デニムのジャケットの下は白のトップス。スカートはミニ丈で結構足が出てる・・・座ったら中が見えねぇかっ?
そのトップスも何気に透けてるし、み・・・見えてる気がするんだけど。ブラのラインが・・・・・・やべぇ!


『司様、お会いになって一番始めにすることは女性のお洋服を褒めて差し上げることです。これは絶対に外せません!
どんな服でも褒めちぎるのです!女性はこんな時は必ずお洒落するもの・・・それを無視するのは男ではありません!』

西田がそんなこと言ってたな・・・いや、確かに可愛いしここは褒めとくしかないだろう!


「なに?どうかしたの?・・・耳が赤いわよ?さっ!中に入ろうよ!」

「お、おう!牧野の希望だからな!付き合ってやるよ。・・・それにしても今日の服、お前にしては可愛いじゃねぇか!
いつもそんなカッコしてたらいいのに・・・女らしくていいと思うぜ」

「そう?これ、この前類が買ってくれたの。今年の流行なんだって!着ていく場所がなかったからちょうどいいかと思って!
やっぱり類ってセンスもあるし流行にも敏感だよね~!」

「・・・・・・」

なんで俺が類の選んだ服を褒めなきゃなんねぇんだよっ!西田のヤツ・・・嘘ばっかじゃねぇか!


***


中には入ったが、大体公園ってのは何をするんだ?ただ歩くのか・・・よく見たら肩をくんでるヤツらや
ベンチでいちゃついてるヤツらや、完全に自分たちの世界に入ってるヤツもいる。


『司様、公園デートというのはとにかくくっついてイチャイチャしていいのです。周りをよく見たらわかります。
そこら中にベタベタと溶けそうな2人組が見えるはずです。それと同じようになさってください。
肩に手を回そうが、腰に手を回そうが自由なのです。ついでに暗いところに入り込んでも誰も見てないですから』

つまり、あれと同じようにすりゃいいのか・・・そう思って牧野の肩に手を回そうとしたら大声を上げられた!

「きゃあぁーっ!あった!」
「うおっ!!なんだ、てめぇ、いきなり大声出しやがって!」

「ここよっ!ここにちっちゃな動物園があるのよっ!ウサギを抱っこ出来るんだって!道明寺、行こうよ!」
「あ?・・・・・・なんだと?動物園?」

牧野の肩に回そうとした手を宙に浮かせたまま・・・その牧野は俺を置いて動物園ってのに向かって走って行った。
でも振り返って俺に手招きするコイツ・・・無茶苦茶可愛いじゃねぇか!
マジで動物は苦手だがここはビシッ!と喜ぶ牧野の側についててやるか!西田の言うことなんかクソ食らえだ!

牧野はもうその中で小さくて不気味な生き物を触っていた。どうやったらあんな物体を抱きかかえられるんだ?
絶対に俺に回してくるなよ!そう心の中では叫びつつも嬉しそうにしている牧野の横に立っていた。
その時、牧野が抱きかかえていたウサギが牧野の着ているジャケットの中に潜り込んで行きやがった!
なんて事だっ!この俺でさえ手が出せないその部分に思いっきり全身で入って行くとは!

「いやだぁっっ・・・!くすぐったぁい!道明寺、ちょっとこの子を取ってよ!」
「えっ!!・・・俺がそいつを取るのか?」

「早く!どんどん奥に潜っていくんだもん!早く取ってよ!」
「お・・・おぉ!ちょっと動くなよ!・・・今、取ってやるから」

そうは言っても手が出なくて、でも牧野は早くしろって叫んでるし・・・こうなったらやるしかねえ!
思い切って手を伸ばしてそのウサギが潜ってるジャケットに手を突っ込んだら同時にウサギは牧野の服の中から飛び出していった!
そして俺の両手は牧野の・・・牧野の胸のど真ん中にドカン!と乗っかってた!

「うわあぁあああっ!悪ぃっ!そんなつもりはなくてだな・・・!」
「どうでもいいけどさっさとこの手をどけなさいよ!このドスケベっ!」

そこに大勢いるガキの中へ牧野に突き飛ばされた!その勢いでウサギ小屋のど真ん中で空を見上げるハメに・・・。
起き上がろうとしたらさっきのウサギに思いっきり飛び蹴りをくらい自慢の顔にひっかき傷がっ!

それを面白そうに腹を抱えて笑いやがる牧野。なんでこの屈辱的なことが許せてしまえるのか自分でもわかんねぇけど
やっぱりコイツをどうしても手に入れたい!この笑顔を見たらあいつらに渡すなんて出来ねぇ・・・そう思った。

「ごめん!ちょっと強く押しすぎたね・・・はい、手をかしてあげるから起きなよ!」

そう言って手を差し出されたからその手を取ろうとしたら、前のめりになった牧野の服の隙間から夢にまで見てた谷間が見えた・・・!
そしてさっき掴んだ胸の感触が蘇ってきて顔が熱くなった。


『司様、たまにはニアミスで女性の恥ずかしい所が見えてしまうこともあるでしょうがそこで赤くなるのは自分から経験のなさを物語るようなものです。
万が一そんな場面に出くわしてもさらりと・・・あくまでもさらりとかわすのです。
ガン見するなどもってのほかです。他の男には見せるなよ!ぐらいのお言葉をお掛けくださいませ』

西田が言ってたのはこの事か?そうは言ってもすでに眼がそこから離れなくてガン見状態!
しかも牧野の胸には今でもウサギが乗っててそのトップスの中を覗いてるんだが。

「お前・・・ウサギになんか見せてんじゃねぇよ!いくら貧相な胸だからって!」

「馬鹿言ってんじゃないわよ!道明寺が見たんなら犯罪だけどウサギなら可愛いからいいのよ!」

俺はウサギ以下かっ!・・・でも、ガン見したことはバレてなかった。


***


「お天気が良くて気持ちいいね!向こうに広い芝生公園があるのよ!行ってみようよ」

「いいけど・・・こんなんでお前満足なのか?何にも面白くねぇけど」

「そう?私は満足だよ!普段人混みで騒がしくしてるから静かなところでリフレッシュ出来るじゃない!」

そんなもんか・・・俺にはわかんねぇけど女ってのはこんな場所でリフレッシュ出来んのか?
そんなことを思いながら牧野と並んでこの公園の並木道を歩いていた。


『ベンチという所は恋人のためのラブチェアですからどうぞいい場所がございましたらお座りくださいませ。
出来たら道に背中を向けていて目の前が綺麗な池だったりすると効果覿面です。手を繋ぐなり足を絡ませるなりご自由にお楽しみ下さいませ。
肩を組んで抱き寄せてもそんなときの女性は絶対に断りませんから!』

ちょうど俺たちが向かっている方向に西田の言うようなベンチがあった。
あそこに辿り着くまでに牧野に一言・・・バシッと俺の気持ちを伝えておくか!

「あっ!ソフトクリーム売ってる!道明寺食べない?まだ、暑いしさ!」
「あぁ?俺はそんなもの食わねぇよ!それよりもお前に話したいことがあるんだけどよ・・・」

俺はゴージャスなホテルやラウンジでの告白しか考えてなかったけど、よく考えたら相手は牧野だ!
この自然に囲まれた公園の中で愛を叫んでも良くねぇか?
その方が絶対に牧野のハートをぶち抜くような気がしてきた!


「なぁ・・・やっぱり俺とお前は離れられない運命じゃねぇかって思ってんだ。今更言わなくてもわかってるだろうがこの俺についてこい!
絶対にお前が一生笑ってられるようにしてやるからよ!・・・な、牧野」

そう言って振り向いたら・・・そこに牧野はいなかった!

あれ・・・今思いっきり愛を叫んだと思ったけど?!
顔を上げたら牧野はさっきのソフトクリーム屋で嬉しそうにそれを買っていた!
そして両手に1つずつ持ってパタパタと小走りで戻ってくる・・・もしかして俺は今、思いっきり独り言を言ってたのか!!


「お待たせ~!道明寺もやっぱり食べようよ!せっかくだからさ!」

俺にソフトクリームってもんを押しつけて牧野はすぐ側のベンチまで俺の腕を掴んで連れて行った!
なんだ?この展開はっ!・・・どうして俺がこんな物を持って牧野に引っ張られないといけないんだっ!

そしてベンチに2人で座って目の前の池を眺めながら、俺は隣の牧野を見ていた。
その白いクリームが牧野の口の中に入っていく・・・ちょっと見える赤い舌がそのクリームを舐めるのが堪らない・・・。
そして唇についたクリームをその舌がくるっと回して舐める。それの繰り返しから眼が離せなかった。

やべっ・・・なんか、どっかが熱くなってきたっ!

赤くなるのはいつも牧野の方だったはずなのに、絶対今は俺の方がおかしくねぇか?!
なんだかどっかがウズウズしてる俺・・・何処を見ていいんだかわかんなくてソワソワしていたら牧野が声をかけてきた。

「どうしたの?道明寺。食べてないからソフトクリームが溶けてるじゃん!ほら、手が汚れてるよ?」
「うおっ?・・・あっ!なんで俺の手がこんな事に・・・っ!」

って言った次の瞬間・・・牧野が俺の手を掴んで自分に引き寄せて溢れたクリームを舐めた!
そして少しだけ牧野の舌が俺の手をかすめていく・・・この時の俺はもう頭が真っ白になって背中にゾクッと何かが走ってった!


トロ・・・っと何かが流れたような・・・


「きゃあぁーっ!!道明寺、鼻血出てるじゃないのっ!服が汚れるわよっ!鼻を押さえてっ・・・早くっ!」
「えっ・・・鼻血?」


鼻の下を指で触ったら・・・確かにそこには赤いものが・・・ッ!

「うわあっ!なんだ、こりゃ!この俺様がなんでっ!」
「暑いから逆上せたんじゃないの?ほら、上向いてなさいよっ・・・世話が焼けるんだから!」

牧野はカバンからティッシュを出して何かクルクル回している・・・俺は鼻を押さえて上を向いてたから牧野のしてることは見えなかったが、
まだ頭の中に牧野の舌がチラチラしてて何も考えられねぇ・・・。

そしたら急に横から牧野がボンっと鼻に何かを詰め込んだっ!

「何しやがんだっ!・・・・・・これはなんだ?」
「鼻栓よ!鼻血が治まるまで鼻にティッシュ詰めとくの!いいじゃん、誰も見てないし!」


道明寺司に・・・鼻栓?


どうでもいいが隣の牧野はまた自分のソフトクリームに夢中になってるような気もするが・・・?
俺はこの公園で告って、ここを出たら牧野を連れて一流の店でメシを食って・・・その後のことまでシナリオを考えてたのに全部が吹っ飛んでいった。
一体どこが悪かったんだ?なんで失敗したかがさっぱりだっ!


「道明寺って本当に公園が似合わない男だよね!逆上せて鼻血だなんて・・・みんなにバラそうかな!」
「バラしたら殺すぞ・・・!」

バラされて堪るか!なんで愛を語りに来たのに最終的には牧野を脅すようなことになってんだ?
せっかく一番でこのチャンスを手にしたのに・・・ウサギに蹴られて鼻血で終わった・・・。
拍手ありがとうございます♪
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