Battle

Battle 8話 ロキ






「さあ、今日はどこへ行くんだ?」
「なんか、慣れてきたよな。そろそろ終わりに近いんじゃね?」
「うーんと、地図見ると・・・。え!英徳大学って書いてある!」
「「「「はあ?」」」」

やってきたのは英徳大学の図書館。
「図書館なんか本ばっかりなのに、戦う相手なんているのか?」
などとしゃべりながら入ると、後ろでバタン!という大きな音とともに扉が閉まった。
一瞬のうちに扉は消え、周りは全部書架で囲まれてしまった。

ブウンというかすかな音のする方を見ると、いつの間にか大きなパネルが現れ、そこには文字が横一列に表示されている。
「ま・む・し・・・?」

その瞬間!バササササッという音とともに部屋中に四角い紙がばらまかれ、宙をひらひらと舞っている。あっけにとられて見ていると、類がそのうちの一枚を手に取った。そこには「ま」の文字。パネルの字にあわせると文字の色が変わる。

「スクラブル?」とあきら。
「カルタ取り!」とつくし。

「いや、両方ともちょっと違うと思うけど・・・」といいつつ、類は「む」と「し」の字を見つけて、パネルにあてると、ピンポーン♪という音とともに消え、次の言葉が現れた。そして、その上にはタイマーが。数字はカウントダウンしていっている。

「時間内に片付けろってことかよ」
「あ、牧野、その右にある「ガ」とってきて」
「類、お前の後ろに「ウ」が浮いてるぞ」

一つの言葉を答えると、50ほどある赤いランプの一つが緑にかわる。
文字に強く目が早い類とあきらがテキパキと文字をみつけて指示を出し、つくしと総二郎はひたすら宙を舞う文字を追いかけ回している。日本語に弱い司は、右往左往するばかりで役に立たない。

「あーあ、俺様の出番は無しかよ」とブツブツ文句を言う司を怒鳴りつけようと、つくしは振り返ったが、そのままぎょっとして思わず叫んだ!

「道明寺、なんか足の上にいる!」

なんと、床に落ちた文字が立ち上がり、司の足をよじ登っていたのだ。
「おわっ!」叫んで、振り払うと床に落ちた。その字は「バ」と「カ」。なおも起き上がろうとする文字を踏みつけると、キュウウと音をたてて消えていく。

「美作さん、背中!」
あわてて振り向いたあきらの背中には、「ハ」と「ゲ」の文字がへばりついている。
「ハゲ・・・」と呟く類に、
「俺はハゲじゃねえっ!」と叫ぶあきらの背をはたいて文字を落としたつくしは、「気色悪いけど、別に悪さをするわけじゃないみたい?」というが、自分の腕に「け」「ち」の文字がついているのを見ると、ムカっとして「あたしはけちじゃない!」と叫んでいる。

気がつけば、総二郎の胸には「エ」「ロ」の文字が並んでいるし、類の足には、「ね」「ぼ」「す」「け」の字が一列縦隊で行進している。

「司、総二郎、床の文字をやっつけて!俺とあきらはパズルを片付けていくから!」
司はひたすら文字を踏みつぶし、総二郎は宙を舞う文字を刀でなぎ払っている。
「要る文字まで消さないでね!」

つくしはどこから取り出したか、はたきを持って、みんなに取り付こうとする文字を払い落としていたが、気がつくと、なんだか部屋が狭い。
「ちょっ、書棚が近づいてきてる!」

「くそっ」
「そういう仕掛けかよ!」

部屋の三方の書棚が音もなくじりじりと迫ってくる中、次々と文字を見つける類とあきら。文字を踏みつぶす司はまるでヘタなダンスを踊っているようだ。刀を振り回すスペースがなくなった総二郎は、刀をサバイバルナイフに持ち替えている。

「あと1問!」
「あと1分!」

類が最後の文字「に」をあてると、パネルの文字「は」「な」「た」「ば」「を」「き」「み」「に」が順番に輝いて部屋の中に光が溢れた!

「はああああ~、やっと終わった・・・」
パネルが消滅してぽっかりと通路があいたのを見て、ほっとしたのもつかの間。

「・・・というわけにはいかないみたいだぜ」
「うそでしょ・・・」

そこには見上げるような巨大な本が妖しく輝いて立ちふさがっていた!
表面に何か文様が刻印された本は、図書館のホールと同じぐらいの高さ。妖しげな赤黒いオーラが周りに渦巻いている。
「お化け百科事典・・・」

バサッ!と開いた本から、何かが音を立てて飛んでくる。ゴンと鈍い音とともに通路の壁に当たって下に落ちたのを見るとこぶし大の硬そうな文字。

「げっ!」
「うん、「ゲ」の文字だね・・・」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」

再びバサササと開いた本から、次々と文字が飛んでくる。
「ア」「ホ」
「ぼ」「け」
「く」「る」「く」「る」「パ」「―」

「文字を認識できるのが腹が立つ・・・」

引き返そうと後ろを振り向けば、いつの間にか壁に変わっていて、元の部屋には戻れなくなっている。お化け本をやっつけるしかない。

「ぎゃっ!」
「いてっ!」
文字がかすめた腕や足はじんじんと痛んでいる。

「危ないから、盾出して!」
慌ててそれぞれ操作して防御のための盾を出した。
司が出したのは輝くジュラルミン製の盾。機動隊が持っているみたいなヤツ。
あきらが出したのは、エンブレムが刻印されたヨーロッパ風の盾。
総二郎が出したのは、堅そうな木を鉄で補強してある盾。
類には何もない。

「おい、類、俺の盾の陰に入れ!」という司の言葉にもかかわらず、平然としている。そこへ飛んできた「あ」の文字が類の前でぽとりと落ちる。
「なんかね、バリアってあったんで出した」
「早く言えよ・・・」
「すごーい、いいなあ」

そういうつくしが構えているのは・・・鍋ぶた?
「あたしなんか、鍋のフタだよ?」
「おまっ、そりゃ、役に立たねーぞ!」
総二郎が自分の盾の陰につくしを引っぱりこんだ。

飛んでくる文字は数を増し、もう言葉を読むことはできない。盾にゴンゴンと音を立てて次々とぶつかってくる。
「早くやっつけなきゃ!」
「あきら、ライフル! 総二郎、弓! 司、手榴弾!」
次々と攻撃を仕掛けるが、すべて吸収してそのたびに本は大きくなっている!

「ちくしょー、だんだんデカくなってやがる!」
「本に効く武器ってなんだよ!」
「本ってどう処分する!?」
「え、古本屋に売る・・・」

お化け本の怒りに触れたらしく、むくり、と大きくなった。

「うわ、デカくなったぞ、てか、こんな本売れるか!」
「えっと、古紙回収に出す・・・」

お化け本はやはり気にくわなかったらしく、むくり、とまた大きくなった。オーラが黒さを増している。

こんな本、誰が回収してくれるんだよ!じゃなくて、やっつけるためには・・・」
「えーと、燃やす・・・?」

「「「「それだ!」」」」
「司、火炎放射器!」
「おうっ!」

司は取り出した巨大な火炎放射器を肩に担ぎ、本に向かって放射した!
轟音ととともに放たれた炎は、本をひと舐めし、お化け本は断末魔の悲鳴とともに燃え尽きていった・・・

テテテテ♪テッテッ♪テッテレェ~♪

『オメデトウゴザイマス ミッションクリアデス ミナサンノレベルガ 7 ニアガリマシタ』
『ソレデハ ラストステージメザシテ ガンバリマショウ』

眩しい光があたりに満ちた後、図書館はいつもの様子を取り戻していた。

「なあ」
「ん?」
「なんで、ひらがなとカタカナだけだったんだろうな」
「漢字がぜんぜんなかっただろ?」
「うーん、標準仕様がアルファベットを考えてたから、漢字に対応できてなかったからかも」
「よかったじゃん、司には」

「「「でも、役に立たなかったけどね!」」」

新たな武器、火炎放射器にご満悦の司の耳には、そのヒソヒソ声は届かなかった。
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