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Fantasy あきつく最終話 Gipskräuter

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あきら×つくし 最終話



「…ツクシ。起きろ。」
「いいじゃん、気持ち良さそうに寝てるんだから。これ掛けてあげれば?」

男はマントを指差した。

「そーゆー問題じゃねーんだよっ!」


う、うーん…。
うるさいなぁ。


「ツクシ、風邪を引くぞ、起きろよ。」

朦朧としたツクシ姫の目に飛び込んできたのはそれはそれは美しい男達だった。


これってどういう事なんだろう…?
っていうか、なんかすっごく見られてるんだけど!!
綺麗すぎて怖いんだけどっ!!


四人の美男子に覗き込まれツクシ姫は恐怖と恥ずかしさから、キョロキョロと辺りを見回した。

辺りには他に人影もない。
見渡す限りに広がる大草原。
しかしこの場所にツクシ姫は見覚えがあった。


ここは…確かマッキーノ王国の西の外れにある草原…。
私…シゲールに変な魔法で異次元に飛ばされたはずじゃ…?
?!
シゲールってば失敗したんだ!
異次元に飛ばすなんて言っておきながら、こんな王国の外れに間違えて飛ばしたんだ!!


そこでつくしはふと我に返る。

「大変!お城に戻らなくっちゃっ!!」

城が攻撃を受けていることを思い出したツクシ姫は血相を変えて走り出そうとした。が、その後ろ手を男に掴まれる。

「おいおい、ツクシ、そんなに慌てると転ぶぞ?
お前そそっかしいんだからな。」
「そうだぞ。それにそんなに急いでどこに行くんだ?」
「呼び出しといて置いてくなんていい度胸してんじゃねーか!!」
「ツクシ、あっちの方寝心地良さそうだよ?」

「何を呑気な事を言っているの?!城が攻め込まれているというのにっ!!」

四人の男は顔を見合わせると、肩を揺らして笑いだした。そんな四人を見て呆然とツクシ姫は立ち尽くす。


『…め…ツクシ姫。よくご覧ください。
そこにいらっしゃるのは幼馴染みの王子達です。
眠っているはずのこの方々が目覚めていることをおかしいと思われませんか?
それによくご覧になれば気付かれるはずです!
ご自分の観察力のなさを私たちのせいになさらないでください!!』


最後にピシャリと雷を落とし、サクラーコの声は消えていった。


えっ?どういう事?
失敗したんじゃないの?


頭の中に響いたその声に疑問を抱きながらも、改めてツクシ姫は四人の美しい男たちを見上げる。

現状を認識しようと辺りにばかり目がいってしまったツクシ姫だが、よくよく顔を見てみるとそれは確かに幼馴染みの四人の王子達だった。



ここで付け加えるのであればこの四人。

何年もかけてツクシ姫に猛アタックをかけ続けています。
が、如何せん、疎いツクシ姫にはこれっぽっちも届きませんし響きません。

それぞれがツクシ姫の好意を感じながらも二の足を踏んでいましたが、ここに来てとうとう最終手段に打って出たのです。

順にツクシ姫に誘いをかけ、自らが一番と思うデートを繰り広げます。
笑顔のツクシ姫を見ながら改めて思うことは皆同じ。

この笑顔を自分一人のものにしたい………と。

デートの最終目的はプロポーズ。
どんな場面をも想定し、万全の体勢で望むソウ王子とアッキーラ王子。
対して頭を捻りうんうんと唸り、それでも最後は自分らしくと決めたツカサ王子。
何を考えているのかがさっぱり分からないルイ王子。

その効果は絶大でした。

どんなに鈍くても気づかない訳などありません。
四人の王子達のプロポーズを目の当たりにしたツクシ姫はただただ驚きました。
けれど同時にジワリジワリと喜びが込み上げ、個々を思い出してはため息が溢れます。

選べない。
でも選ばなくてはいけない。
大好きな王子達の中から誰か一人を。

ツクシ姫は日々葛藤の中にいました。

そしてとうとう答えを見つけ出し、今日この日にこの四人を呼び出していたのです。



目の前にいる四人の王子。
ツクシ姫の知っている王子達とは何かが違う。

精悍な顔立ちに逞しい体は一回り程大きくなったようにも見える。

「………今は…××12年よね?」

ツクシ姫の恐る恐るのその問いかけに王子達は再び笑いだした。

「さっきから何をおかしな事ばかり言ってるんだ?」
「って寝ぼけてんじゃね?」
「寝てばっかいるからだよっ!」
「あんた大丈夫?」

ソウ王子はツクシ姫に近づき、その美しい顔を近づけツクシ姫を覗き込む。

「ツクシ、今は××17年だぜ。」

ソウ王子の綺麗な瞳に見つめられ何も考えられず、ツクシ姫はただその瞳をみつめ返している。

「また見惚れちゃった?俺と結婚したら毎日見放題だぜ?」

ニヤリと笑いソウ王子はツクシ姫の目元にチュッとキスをする。
ツクシ姫は二重の意味で暫し呆然。

「てめぇっ何してんだよっ!」
「ツカサ、うるさい。」

揃ってソウ王子に非難の声をあげるも、その声はツクシ姫には届いていない。

ソウ王子が告げた刻。
それはツクシ姫が元いた次元の5年程後の世界だった。
四人の王子達が逞しく見えたのも道理である。

「王国は?パパとママ、それにシンは?無事なんですね?!」

おかしな事ばかり口走るツクシ姫に、王子達は顔を見合わせ頷きあう。

「姫、今日は一旦帰ろうか。」

アッキーラ王子は優しくツクシ姫に告げ、その華奢な体を抱き寄せた。


『帰ってどうすんのよ!これで間違ってないって分かったでしょ!!
ほんっと失礼しちゃうんだからっ!!』


ツクシ姫の頭にキーンと高いシゲールの怒鳴り声が響く。

「あ、いえ…あの…ごめんなさい、もう大丈夫です。
それで、今日は何故ここにいるのでしょう?」

言いながらゆるゆるとアッキーラ王子から身を離す。

「ひどいなぁツクシ。今日は姫からの誘いだろ?」
「そうそう。ツクシが俺たちの中から1人を選んだって言うから、飛んできたってのにそんなつれないこと言っちゃうんだ?」
「もったいぶってないでさっさと言えっつーの!」
「ツクシ…まだ迷ってるの?俺にしときなよ。」

四人が同時にツクシ姫を覗き込む。
そんなことに免疫のないツクシ姫の顔はリンゴのように紅く染まっていく。

「えと、あの…その…。」

「せっかくだからそれ、食べようか?」

困り果てた様子が愛らしく助け船を出そうと、アッキーラ王子はツクシ姫の横にちょこんと置いてあるバスケットに視線を送った。

「あぁそうだな。ツクシのお手製はうまいもんな。」
「チッ。しょうがねーな。」

慣れた仕草でアッキーラ王子はシートを広げ、ソウ王子はバスケットを大事そうに抱えるとシートに広げ始める。
ツカサ王子は言葉とは裏腹に笑みを浮かべてシートへとあがる。

「ほらおいで、ツクシ。」

ツクシ姫はルイ王子の極上の笑みを受け、高鳴る鼓動を押さえるだけで精一杯。
ソウ王子はそんなツクシ姫の手を握り引き寄せる。

「腹のムシが騒ぎ始める前に食おうぜ。」

そのギャップにツクシ姫の表情は緩んでいく。それを見た王子たちの顔にも優しい笑みが広がっていく。
お手製のお弁当に会話を弾ませ、楽しい時間を過ごしていた。


しかし楽しい時間はあっという間に過ぎていくもの。

そろそろ陽も暮れる頃。
ツクシ姫は意を決して口を開いた。

「王子…」
「おっと!ツクシ姫。」

それまでとは打って変わったかのように表情を固くするツクシ姫に、ソウ王子はその言葉を制した。

「返事とはいえこういうことはやっぱり男からだろ。
ツクシ姫、必ず幸せにする。俺と結婚しよう。」

その場にひざまづくとツクシ姫の左手を取りその薬指にそっとキスを落とす。
ストレートなその言葉と行動にソウ王子の誠意が表れているようでツクシ姫のドキドキは止まらない。

それを見ていたアッキーラ王子だって負けてなんていられない。

「ツクシ姫。一緒に笑いながらこの先の人生を歩いていこう。
俺と結婚してください。」

優しく暖かいアッキーラ王子らしいプロポーズ。
ツクシ姫のドキドキは更に加速していく。
二人の王子の真摯な眼差しに一層緊張感が増していった。

「ツクシ。」

ルイ王子はツクシ姫の隣に立つと、いつものように手と手を繋ぎにこりと笑みを浮かべた。

「ずっと、さ……こうして手をつないでない?」

「えっ?」

「俺の隣にはツクシがいて、ケンカしてもこうやって、手繋いで仲直りするの。来年も再来年もその先も…俺の一番近くにいてよ。」

ポウッと赤くなるツクシ姫にズカズカと近づきツカサ王子はその前に立つ。

「お前は俺の傍にいりゃいいんだよっ!
断ったって無駄だ。オレを受け入れるまでどこまでだって追いかけてやる。」

ツカサ王子はニヤリと不敵に笑った。

四人の王子達は申し合わせたようにツクシ姫の前に立つ。
ツクシ姫はゆっくりと王子達の顔を見つめると、そろそろと歩を進めただ一人と決めた王子の前に立った。
いつも優しく気遣ってくれるこの王子こそが自分の伴侶だと…。

「アッキーラ王子。あなたとずっと笑いあいながら暮らしていきたいです。」

なかば無理だろうと諦めていたアッキーラ王子はツクシ姫の言葉に驚きを隠せない。けれども次第にその頬が緩んでいく。けれどそれは束の間の事だった。

「ですが…私は私ではないのです…。」

「えっ?」
「はっ?」
「何言ってんだ?」
「ツクシはツクシでしょ?」

訳が分からないと呆れ気味の四人の王子に、ツクシ姫は馬鹿正直に事情を話した。

「ツクシ。俺はそれでも構わない。どの時代であろうと姫は姫だよ。」

アッキーラ王子は手を伸ばし、ツクシ姫の美しい黒髪を一房手に取るとキスを落とす。

「ご家族を呼ぶといいよ。みんなで笑って暮らそう。」

本来ならばそんな眉唾ものの話を王子達が信じるはずもない。けれど相手がツクシ姫だからこそ、信じる気になっていた。


こうしてツクシ姫とアッキーラ王子はめでたく結ばれる事となった。







さて一部始終を地団駄を踏みながら見ていた3人の王子達。

ソウ王子とルイ王子は共に顔を見合わせるとその場を足早に去って行きました。
どうやら考えることは同じなようで、二人はこの時代の『ツクシ姫』を探すと心に決めたようです。

そして残るはツカサ王子ただ一人。

「俺はぜってー認めねーぞ!ツクシは俺のもんだっ!!」

そう言うと手を取り合っている二人の間に割って入ります。

「おいっふざけるな!ツクシは俺のものだっ!!」

アッキーラ王子はツクシ姫の手をギュッと握ると自分の背に隠しました。

ツカサ王子は文字通り『どこまででも追いかける』ようで…アッキーラ王子にはお気の毒ですが、ツクシ姫を手に入れたのだから仕方ない、諦めていただきましょう。



えっ?

本当のツクシ姫?
シゲールとサクラーコ?

その後どうなったか?



本当のツクシ姫は草原におりました。
どうやらこの時代の『ツクシ姫』は自由奔放な方だったようです。
トリップ中の瓜二つのツクシ姫を偶然見つけ、城を出て町で暮らすことを決意したのです。元々庶民暮らしに憧れていた『ツクシ姫』には絶好のチャンスとなったようですね。

シゲールとサクラーコ、ツクシ姫のご家族は、姫のペンダントの力によりこの時代に呼び寄せられ、今はアッキーラ王子が用意したお城で相も変わらず元気に楽しく暮らしております。


そしてアッキーラ王子とツクシ姫は笑顔の絶えない家庭を作り、末永く幸せに暮らすのでした。




fin
拍手ありがとうございます♪
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