駄文置き場のブログ 2nd season

□ 本編 『In The Forest』(完結) □

In The Forest 44

第44話



「何だ? 牧野。お前も買い物か?」

あきらに言われ、手にしたショップバック
-先程まで着ていたものとは別につくしに手渡された、パーティ用クラッチバックの入ったそれ-
を見られたのが何とも気まずく、書類の入った大きな鞄の後ろに隠す。
あきらは、そんなつくしの様子を珍しいと思いつつ、口に出して尋ねる野暮な真似はしない。

「み…美作さんこそ…どうしてここに?」
「ん…? ああ…ちょっと店に用があってな…」

つくしが出てきた店舗の隣を指差す。
ブランドの中でも比較的若い世代に人気の店舗。
あきらの趣味とは若干傾向が異なる。

首をかしげるつくしに、あきらが出張に行った際、双子の妹達に頼まれていた品物を買い忘れたという話をする。
結局、同じブランドショップの銀座店に頼み取り寄せて貰い、合間を縫って取りに来たらしい。

「…なんか、美作さんらしいね…」
「…全く……俺は遊びで行ってきた訳じゃないのによ…」

ぼやきつつ妹達に甘いあきらの様子に、つくしにも思わず笑みが浮かぶ。
そんな2人のやりとりを、楽しげに眺めていた女性と目が合った。
あきらがそういえば…と、その女性を紹介する。

「牧野は会うの初めてだったな。うちの奥さん」
「はじめまして。美作亜弓(あゆみ)と申します」

丁寧な所作で会釈をするその女性に、つくしも慌てて礼をする。
と、同時にするりと、つくしの手荷物から何かが落ちた。
封書が開き、先程類から渡された招待状の一部が開く。
あきらがそれを拾いがてら、見るとはなしにそれを目にする。

「類んとこの招待状か。牧野も行くんだろ?」
「あ…その……」
「お前、類の顧問なんだろ? 顔つなぎにも出ておいた方がいいぞ」

あきらが類と全く同じ内容を口にする。
つくし自身、それは承知していたが、正直迷いはまだある。
そんなつくしの躊躇を、あきらは全く別の意味に捉えていた。

「……ああ、この手のパーティは同伴じゃなくて大丈夫だ。
まぁ三条当たりは誰かひっ連れて来るんだろうがな。
そういえば、総二郎は一人で来るって言ってたぞ…」
「………あ……」

『総二郎』の言葉に、つくしの表情が陰るのをあきらは見逃さなかった。
ちらりと隣に立つ亜弓に視線を落とし、軽く頷くと、つくしの予定をさらりと尋ねる。
不意打ちのような質問に、予定が無い事を素直に答えると、そのまま一緒に来るよう促される。
つくしが断るため、あきらと押し問答している間に亜弓が買い物を済ませ、気付いた時には車の後部座席に押し込まれていた。



-私ってば…完全にお邪魔虫よね…。

あきらが運転し、助手席には亜弓が座る。
何やら話す2人の姿は、端から見てもお似合いだ。

あきらが出張から帰ってきたばかり、ということは、どう考えても今日はデートだった筈。
そこに何故か、ちょこんと後ろに座る自分の姿は、酷く場違いなように思えてならない。

やっぱり帰ろう。
そう思った時、亜弓がつくしに話しかけてきた。

「でも、今日牧野さんにお会い出来るとは思わなかったわ」
「え…? あの…?」

思わず首を傾げる。
昨年あったあきらの結婚式には、勿論参加はしていない。
つくしの方は、雑誌に載っていた2人の姿は目にしていたので亜弓の顔くらいは知っていたが、亜弓が自分を知っているとも思えない。

「実は私も英徳だったのよ。学年は違うけど…」
「俺等の1つ上だから、牧野とは1年の時だけだな」
「あんまり年齢の事は言わないで…!」

拗ねる亜弓にあきらが軽く片手を上げて謝る。
更に亜弓が話を続けると、つくしによる『F4への宣戦布告』は大学でも有名だったとのこと。

「本当にびっくりしたけど…でもちょっと胸がすっとしたのよ」
当時のことを思い出したように、くすくす笑いながら亜弓が言う。

聞けば亜弓の父は、大手商社に勤めるエリートであるものの、英徳の中では『比較的庶民的な家』とのこと。
つくしから見れば充分にお嬢様だと思うのだが、本人に言わせれば『美作』と釣り合う家柄では無いらしい。

ところが美作家は『完全な実力主義』
あきらは試験無しで入社はしたものの、平社員からのスタート。
他の同期より過酷な仕事をし、他の役員達の信頼と同意を得て、つい最近、本社役員に昇格したばかりだ。
異例の出世スピードに多少の身贔屓があるとはいえ、その成果は本人の努力の賜と言える。
亜弓とは職場の先輩、後輩として知り合ったとのことだが、あきらの母、夢子の熱烈な後押しで、すんなり結婚まで決まったという。
曰く『オフィスラブなんて、ハーレクインロマンスみたいよねぇ…』
と、目を輝かせていたとのこと。
一度だけ会った夢子の少女趣味な姿を思い出し、ある意味納得をする。

そんな会話をしているうちに辿り着いたのは、あの頃とそう変わらない、薔薇のアーチのある可愛い洋館だった。


関連記事
スポンサーサイト

*    *    *

Information

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする