Battle

Battle★Spin off story ロキ






ヒーローに憧れていた。
アニメも漫画も映画でも。ヒーローたちは悪者をやっつけて、カッコ良く去っていく。
あんな風にカッコ良くなりたい。みんなにすごいって言われたい。

小さい頃から病弱で、病院と家を行き来していた。あまり学校には行けなくて、友達もいなかった。ベッドで過ごす毎日。そんなとき、父親がゲーム機を買ってくれた。インターネットを通じて、いっぱい友達ができた。一緒に戦って、一緒に喜んで。自分もゲームの中でヒーローになることができた。

学校へ行けないから、通信教育を受けることになった。コンピューターを使って授業を受け、レポートを送る。その中に、情報の授業があった。コンピューターを使ってプログラムを作る。自分でゲームを作れるようになった。

時は過ぎ、自分で作ったゲームが評価されて、就職することができた。いろいろなゲームのアイデアを形にしていく日々。体のムリはきかないし、自分ですべてを作りあげることはできないものの、実力が認められて、大きな仕事が舞い込んできた。

そして、多くの年月をかけて、バーチャルリアリティを使った体感型オンラインゲームが出来上がった。自分のすべてをつぎ込んで作ったゲーム。そのホストシステムに、

Magnificent Almighty Machine of Ultimate System
究極のシステムの壮大な全能のマシン

って名前をつけた。
通称:MAMUS
大げさだし、呼びにくいけど、それぐらい心血を注いでつくったシステムだったから。

やっとテストするところまできた。ゲームにはバグがつきもの。実際にプレイしてみないと見つからないエラーがたくさんある。ゲーマーでのテストを経て、一般人5人のバイトがテストしてくれることになった。モニターを見て驚いた。ゲームキャラクターにも勝るとも劣らないカッコイイ人たち。

ゲーム起点は東京駅。無事にログインし、ゲームが始まったが、いきなりMAMUSが暴走した。プレイヤーのログアウトを許さず、ゲームが続いていく。慌ててこちら側からコントロールしようとしても、上手く行かない。強制終了にも反応しない。

見守るしかない中、ゲームはどんどん進んでいく。そして、出てきたのは、おなじみのヒーローたち。モニタールームにはどよめきが起こる。

「猫娘だ!」
「うぉっ、あれは孫悟空か?!」
「わお、リザードン♡」
「あれって、シヴァじゃない?」

自分のヒーローたちが、自分のゲームに出てくれる。そして一緒に戦ってくれる!
それは夢の世界。
楽しい!ワクワクする!

ヒーローたちは、僕らが組み込んだものじゃない。プレイヤーの頭の中から出てきたもののはず。そのはず…だけど。もしかして、俺のヒーローが影響しているかも?

初期設定では、現実にできないことは、ゲームの中ではできない。でも、やりたいと強く願うことがあったなら、できるようになればいいな、と思っていた。そうしたら、どうだ、強力な魔法が使えるじゃないか。

「すっげー、サンダガ!」
「うひょひょ、パルプンテ!」
「あー、レイズだあ」
「おっ、バリア使ったぞ!」

おなじみの魔法が次々と現れる。それは別のゲームの世界のはず。でも、彼らの中にそんな知識があったのだろうか?…もしかして、花沢の御曹司なら。このゲーム開発にも、携わった彼なら。

あの5人がどんな人たちなのか、花沢類以外は知らない。でも、武器の知識も、その戦いも桁外れ。唯一普通に見える女の子は、大当たりキャラになって、他のメンバーができないことをやってのけ、ゲームの道筋をならしていく。
・・・人のゲームプレイを見て、こんなに面白いと思ったのは初めてだ。

そして、ゲームクリア、ログアウト。
モニターのこちら側で拍手が起きる。なんとかゲームが成立したことで、みんなの顔も明るい。ただ、僕だけはMAMUSが暴走したことで、これからかなりの量のシステムチェックをこなさねばならないだろうと、ため息がでた。

***

「・・・MAMUSの開発責任者は?」
「はい、私です。」
「暴走の原因と、その対策は?」
「暴走はあの回の一度きりで、再現ができないために対処もできないのです。どのような条件の時に暴走するのか、できれば実験したいと思うのですが…」
「つまり、もう一度あのメンバーでミッションを繰り返せ、ということ?」
「…はい。」

苦笑しながら、花沢物産の御曹司であり、開発責任者でもある花沢類はゆるく首を振った。僕と彼とで事後の対策と今後の見直しなどについての話し合いをTV電話で行っているのだが、モニター越しでも呆然と見とれるぐらいの美貌。…すごいなあ、こんな人もいるんだ。

「まあ、もう一度やってみるかどうか、あいつらに聞いてみるよ。」
すんなりとはOKしないだろうけどね。と肩をすくめている。
やっぱ、牧野にバイトを持ちかけて、それで司を釣ろうか、でも総二郎とあきらは無理だろうなあ…などとブツブツ言っている。

「実際のところ、ゲームとしては面白かった。シリアスあり、コメディ要素あり。子どもでも楽しめるようなステージもあれば、ラストみたいに、ハードなものもあるし。だからあとはマムシ次第なんだよね。」

正直、僕のMAMUSをマムシ呼びされるのは、むっと来るものがある。それが顔に出たのか、僕の顔を見て、「マムシ呼びは気に食わないか…」と苦笑いしている。マムシ本人も怒ってたけどね、といいつつ、でもマムシのほうが言いやすいなどと言っている。

「マムシに誘われたよ。寂しいからここにずっといないかって。」

驚いた。
その部分はモニターでは拾っていない。
そっか、そうだったのか…。

**

オンラインゲームが公開された。さっそく話題になり、多くのゲーム好きが集い、様々なミッションを楽しんでいる。バーチャルリアリティとはいえ、自分の頭の中からデータが読み込まれるので、人によってゲーム内で経験することは微妙に違う。同じステージを戦っていても、現れるキャラクターが違っているのが面白いらしい。SNS上では、攻略サイトやチームを組もうという誘いやら、新たなコミュニティがたくさんできている。

そして、開発担当者はすでにいない。ゲーム界で名をはせたプログラマーだったが、もともと病気がちで、ほとんど家を出ることがなかった伝説の人物。このゲームを最後に、あの世に旅立ってしまった。

もしかして、彼はマムシのもとに行ったんじゃないかな?
ある日、マッドハッターの格好をしたマムシの横に、イモ虫が現れるかも。そして、他の人にはわからない秘密を教えてくれるんだ。

また新たなゲームが始まり、伝説が始まる。
モニターが勝手に立ち上がり、マムシが誘ってくるかも。
『ちょっと、いい加減覚えてよね、アタシはMAMUS!マムシじゃないわよ!』

FIN
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