Comedy

Comedy 6話 空色






それなりの牽制をしてやったのに、アイツ等の頭の中は危ない事だらけでさ、
司まで、頭の中がピンク色に染まっているっぽい。

知ってるよ、司……、
時々、トイレに駆け込んでるよね?
あきらも総二郎も、牧野の隣をキープしようとするし、然り気無く肩や腰に手を回そうとする。

それはさ、ちゃんと気持ちを貰ってからでしょっ!

ハッキリ言葉にしなくちゃ判らないのかな?
先に身体の関係に持ち込んで……なんて、
まさか牧野相手に思ってないよね?
そんなの、モッテノホカだからね。
お前ら二人が付き合って来た女達と一緒にしないでっ!
幸い超鈍感な牧野は、中学生並のデートを楽しんでるみたいだから、いいけど。

なんか…、告白すらして無いんじゃないの?
って言うのが俺の推測。
思い通りに進まないデートを残念がってるのかと思えば、そうでも無いらしく、
既に二巡目のデートの構想を弾き出してるっぽいのが、気に入らないよね?


やっと回って来た、俺の順番!
ここはさ、まったりゆったりユルユルお散歩デートかな?
いつもの雰囲気を漂わせつつ、俺の気持ちをちゃんと伝えたい。

ん? いや、俺だって男だからね、あんな事とかあんな事とか?あんな事?
………したいよ?

…………うん♪したい……

今までのアイツ等の様子と牧野の様子を観察して、考えて考えて、夜も寝ないで考えたんだ。
………だから、ちょっと寝不足……


「ねぇねぇ、牧野デートしよ♪」

「デデ、デートッ!」

「うん、デート♪」

「花沢 類と?デート?」

「えっ、ダメ?嫌なの?」

「……ダメじゃ無いけど……」

「………ん?」

「嫌じゃ無いけど……」

「じゃ、オッケだよね♪」

……………にっこり♪♪……

「………う、うん……」

「やったっ!そんなに緊張しないでよ牧野。いつもの散歩に毛が生えた感じのデートだからさ♪」

……………にっこり♪♪♪……

牧野が弱いと知っている俺の武器をフル活用しないと、だよね?
『いつもの散歩』を強調する事で肩の力を抜いて貰う事に、成功したっぽい♪♪


***


デート当日、愛車で迎えに行ったら心なしか顔が引き攣ってたけどさ、失礼だよね?
大好きな牧野を乗せて、俺が恐い思いをさせる筈無いじゃん。

今日から、俺の隣は牧野の専用シートだよ♪

いつもの散歩コースの公園周りを、道を変えてぐるっと二周した。
最初はシートベルトを握り締めていたけど、
どうやら俺の運転を信頼してくれたらしい。
いつもの、笑顔になって来てる。

本番はここからだよ、牧野♪

いつも素通りするあのベンチに座ってさ、
肩寄せあったりしてさ、
出来るものならば、牧野の小さい手を握れたら良いな……♪♪


運転中に見つけた駐車場に駐車する時、バックモニターじゃなくて、目視にした。
隣のシートに腕をまわし、後方を確認。
少しでも牧野に近づきたいんだもん♪
思いの外近くにあった彼女の顔、その目元にキスしそうになったけど、
我慢我慢我慢、ぐっと堪えた。


いつも二人で歩く散歩コース。
牧野と歩くと、楽しい事ばかりだ。
夏の木漏れ日もキラキラしていて綺麗だっけど、もう夏は終わってしまって、
頭上は秋色の空に変わっている。

今日は、ゆっくりゆっくりこの時間を楽しむんだ♪

お散歩デートの打診をした時、お弁当を作ってくれると言った牧野。
嬉しさでニヤケル顔を、ちゃんと誤魔化せたのか、心配だった。
二人でベンチを占領して、お弁当を広げる。

「お口に合うといいけど?」

なーんて、心配そうに俺の顔を覗き込む牧野が、
破壊的に可愛い。


………あぁ、幸せだ♪……


ベンチに深く座り直して、食後のまったりタイム。
………………幸せだ♪

肩が触れそうな距離に、牧野。
………最高に、幸せだ♪


「あっ、あんな所にアイスクリームのワゴンがある。花沢 類も食べるよね?」
「ちょっと、行って来る!」

「転ばないでよ」

「ひっどいなぁ~、そんなに子供じゃありません」
「何がいい?」

「んー、何でもいいよ」
「あ、でも一つ全部はいらないから、半分こしよ、ね」

「………うん、判った」
「あっ、これ良かったら食べて、作ってみたの」


半分この俺の提案に、ほんのり頬を染めて駆けて行く牧野の後ろ姿を、目で追った。
……………可愛いな♪
しかも、俺の手には彼女の手作りのクッキーが乗せられている。

アイツ等に、自慢してやりたいっ!


ポッポッ、クルッポッ
……ポッポッ、ポッポッ、クルルッポ


足元に寄って来る鳩も、今日は邪魔じゃない。
お前達も幸せかい?……俺も、幸せだよ。
勿体無いけど、牧野のクッキーを一つだけお裾分けしてあげるね、特別だよ、特別。

小さく割ってあげるから大事にお食べ、
良く味わって食べるんだよ。



気持ち、良いなぁ………


ポッポッ、クルッポッ
ポッポッポッ、クルッポッ

クルッポッ、クルックルッポッ


………し……あわ……せ…………だ……(な)……


ポッ、ポッ、ポッ
クルッポッ、クルックルッ、ポッ

ポッポッ、クルルッポッ


…………はな………い、……る………い……。

ん、牧野の声がする。

……ね……、る……い、

「ねぇ、花沢 類。起きて」

「……………………………」

「そろそろ、起きて」

「……ん………」


……!!!!!!! やべっ!!
……………………寝てた…………
ここ数日、牧野とのデートの事ばかり考えて、寝不足に寝不足を重ねてしまった……

ゲェーーッ! マジッ?
……………牧野のクッキー喰われたっ!
グ、グ、グェーーーーッ!
クッキーの代わりに鳩の糞握ってるっ!

慌ててトイレに駆け込んでその手を洗い流し、
鏡の中の自分に、愕然。

…………髪の毛に絡まる、鳩の羽……


「…………ごめん、牧野」

「ううん、気持ち良さそうに寝てたから」

「ほっんとに、ごめんっ!」

「……ふふ、……楽しかったよ」

「……?……」

「花沢 類の寝顔、一杯見ちゃった」

「……ん、牧野と一緒に居ると、あっと言う間に時間が経っちゃうな」

「………うん、本当に」

「よし、帰ろっか」


差し出した手に重ねられた牧野の小さい手を握り締めて、
オレンジ色に染まり始めた散歩道を後にした。

途中で振り返り、あの鳩達に小さく手を振る彼女を、離したくないと強く思った。



ここだけの話し、ホントにここだけだよ?

寝ている間に、牧野が作ってくれたクッキーを一つ残らず鳩に喰われました。
とか、
クッキーの代わりに鳩の糞握って、靴も鳩の糞まみれでした。
なんて、

アイツ等には、絶対言えない……
拍手ありがとうございます♪
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