最終話Rui

🌷Romance 最終話 類 2話 team Rui

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目を閉じると聞こえてくるのは、たくさんの祝福の拍手。
両親や曾祖父である森山、親しい友人たちからの温かい笑顔。
これ以上ない幸福に満たされたつくしは、その余韻を楽しむように目を閉じた。

そんなつくしを、愛し気に見つめる類。
出会ってからそれほど経っていないのに、誰よりも大切な存在。
そして、今日…つくしと生涯連れ添う誓いを立てた。
だからといって油断はできない。
つくしが少しでも不幸に見えれば、森山は黙っていないだろう。
幼馴染も、店の常連客も、目を光らせているはずだ。
―マドンナは、手に入れてからが本当の勝負なのかもね…
寄り添う肩をそっと抱き寄せ、類はつくしの柔かな髪に口付けた。
「類?」
「幸せにするよ、絶対」
「ふふっ…それはあたしも一緒だよ」
見つめ合い、自然と重なる唇。
今までに何度もキスしたのに、そのたびに想いは深くなる。
「俺を選んでくれて、ありがと」
「あたしを見つけてくれて、ありがとう」
絡まる視線が熱を孕み、吸い寄せられるように何度も深いキスを繰り返す。
堪らずつくしは両腕を類の首へと伸ばし、その身を委ねた。
「つくしって、ほんと、可愛い…」
「る、い…」
「ごめん…今日は手加減できないかも…」
「え…?」
「でも、その前に…」

フワリ…

類の腕がつくしを抱き上げ、驚いたつくしは咄嗟に類にしがみつく。
「ちょっ…類?」
「お風呂。一緒に入ろ」
「え?えええええ?」
「今日くらい、いいでしょ?」
「えっ…ちょっ…でも…っ!」
動揺するつくしを余所に、類は軽い足取りで浴室へと向かう。
「る、類?」
「今日、俺の誕生日だしね。
 あ、そうだ!お互いの誕生日には我儘言っていいことにしようか?
 それがプレゼント、ってことにしよ?」
突飛な提案に、つくしは唖然とする。
―でも…
類が望むなら、それも悪くないと思ってしまうほどに、つくしも類に心酔している。
結局、この笑顔には敵わないのだと、この数ヶ月でイヤというほど思い知ってもいた。
「もう…しょうがないなぁ。
 けど、明日からの旅行に支障が出ないようにしてよね」
「…善処します」
その言葉に一抹の不安を感じながらも、嬉しそうな類には何も言えず。
ただ、その腕に身を任せることを選んだつくしだった。



「ちょっ…る、い…待っ…」
浴室の熱気に、つくしの甘い声が響く。
「大事な大事な奥さんをキレイにするのは夫の務めでしょ?」
類の手にはスポンジなどなく、十分に泡立てたボディソープを手に纏わせ、つくしの肌を撫でる。
その手つきは宝物に触れるように優しく、しかし確実につくしの性感を煽っていく。
「ちょっ…ほんと、待っ…」
「ダーメ。逃がさないよ?」
クスクスと笑いながら、その手を休めることなく足の指の先まで滑らせていく。

―ヤバ…どうしよ。

つくしの滑らかな肌は艶めき、放つ色香に類の自制心は崩れ落ちる寸前だ。
類自身も反応している現状で、どこまで耐えられるのか。
いや、もう夫婦なんだし、耐える必要はないのでは?
そんな自問を繰り返しながらも、泡を洗い流してつくしを湯船へと沈めた。

桃色の花を浮かべた湯船からは淡い桜の香りが漂い、ふぅ…とつくしはそれを楽しむように息を吐く。
「桜のお風呂なんて、初めてかも。」
「ん。俺も初めて。けど、こういうのも悪くないね。」
「うん!お風呂で季節を感じるのもいいね。」
「そうだね。季節ごとにいろいろ楽しんでいこうか。」
パパッと自分の体を洗い終え、類も湯船へと身を沈める。
「あたしばっか洗ってもらって…類の体も洗ってあげたかったのに…」
「それはまた今度ね。それより…こっち、おいで?」
つくしの頬が桜色に染まり、一瞬の逡巡を見せる。
が、浮かぶ桜を揺らしたのはつくしの体だった。
「類…」
腕の中にすっぽりと収まった細身の体を、大きな手が優しく撫でる。
「つくし、可愛い…愛してるよ」
絡み合う熱が身も心も浸食していく。
貪るようなキスに、つくしは眩暈を感じる。
「あ…ヤバ…」
「つくし?大丈夫?」
類の声が遠くなるのを感じながら、つくしの意識はプツリと切れた。
「あれ?もしかして、逆上せた?」
力なく寄り掛かる体を類は慌てて抱き上げ、ベッドルームへと運んだ。




後日。
新婚旅行から帰った類の元に、幼馴染の3人が集まった。
結婚祝いとは名ばかりで、愛しのマドンナを手に入れた果報者に探りを入れるため。
「よぉ、類。嫁さんとうまくやってるか?」
「ご心配なく。それより、怪我治ったんだ?」
「あ?あんなの、1ヶ月で治したわ。
 まぁ、まだプレートは入ってるけどな。」
「痛そ…」
「そんなヤワじゃねぇよ。心配すんな。」
「つくしも気にしてたからさ。
 また店に顔出してやって。」
「…あぁ。」
寂し気に笑う司に、あきらと総二郎は苦笑を浮かべた。

旅行土産のボトルを開けながら、話題は新婚夫婦のアレコレ。
「初夜はお楽しみだったんだろ?いいなぁ~!羨ましいよなぁ、司?」
「しょ、初夜とかっ!生々しすぎだろ!」
「司~、お前まだそんなこと言ってんのか?
 …で?類、どうだったんだよ?」
興味津々の3人に、類は『んー…』と、その夜のことを思い出す。

「一緒にお風呂入ったまではよかったんだけどね。
 湯船でキスしてたら、つくしが逆上せちゃってさ…そのまま朝まで熟睡。」
「「「えええっ?」」」
「でも、寝顔堪能できたから。超可愛かったよ。」

これまでにないほど幸せそうな類の笑顔に、3人は脱力感を覚える。

「らしいっちゃ、らしいけど…」
「ああ…いろんな意味で期待を裏切らないな」
「で、旅行先で仕切り直したんだろ?」
呆れる3人に、類は清々しい表情を向ける。
「当然。でも教えないよ?」

「「「聞かねぇよっ!」」」

類とつくしの熱々っぷりに、言葉を失ったのは言うまでもない。



そんなある日、出社した類は父である社長に呼び出された。
今度、森山産業と共同で行われる事業。その花沢側責任者として、類のフランス勤務を告げる。

それ自体、大した問題ではない。
内容は類にとって興味深いものであったし、森山を安心させる意味でも丁度いい。フランスに住めば今より親友達が訪れる回数も減る。
=二人でいちゃいちゃ出来るというものだ。

ところが…。



「ええっ! つくしは一緒に行かない!?」

類にしては珍しく大声を上げると、つくしがこくりと頷く。ひとり、日本に残るというのだ。
理由のひとつに『まき乃』があったが、一番気にかけたのは、森山の事。
類の仕事は最低でも3年間、日本に帰れない。森山は80を過ぎ明日をも知れぬ身。
ようやっと出会えた曾祖父に懇願されれば、情に絆されたつくしのこと。日本を離れることに同意は出来なかった。


長い長い話し合いの末、類はつくしを“まき乃”へと誘う。

「つくしと初めて会ったのは、ここだったよね」

類が常連客として通っていた頃、いつも座っていたカウンターに腰掛ける。
少し高めの椅子に類が座ると、いつもはある20㎝の差が、丁度同じ目線になる。
不可思議な色の瞳に見つめられ、つくしは今更ながら顔を赤らめた。

「なに赤くなってるの?」
「…だって…」

もじもじと所在無げにするつくしの手をそっと取る。働き者の小さな手。類の大好きな手だ。
その指先にそっと口吻を落とす。

「るっ…類…」
驚き引っ込めようとするつくしの手を、思いの外強い力で引き留める。

「…2年…」「…類…?」
「3年も一人にさせない。2年で終わらせて帰ってくる」

はっとして類の方へと向き直る。
真っ直ぐにつくしを捉える、真摯な瞳。

「…待ってて…ここで…」
-つくしはつくしらしく。ここでしたいことをして。
類の瞳がそう告げる。

類が掴んでいたつくしの手を、自らの頬に押し当てる。掌に感じる、類の肌の感触。
つくしが目を潤ませながらも頷くと、類がそっと顔をずらし、今度はつくしの掌に口吻をした。

「帰って来たら…ここでつくしのご飯、食べさせて」
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