1st お友達限定文章

離れない、離さない

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加筆等はございませんので、ご了承下さい。
※パラレル・ファンタジー設定となっております。






-side Rui-

「全く、俺一人どうにかするのにあの大人数とは…大げさすぎだよね」
窓の外に広がる灯りを、類は他人事のようにぼんやり眺める。

この国の大公である父が他界し、生じた跡目争い。
大公には子供が2人。
今は亡き正妻の子である類と、類の数日違いの妾腹の弟。

類にとっては大公という地位も権力も、どうでもいいことだったが、異母弟とその母親にとってはそうでは無かったらしい。

-馬鹿馬鹿しい…

部屋の片隅に立て掛けてあった、バスタード・ソードを手にすると、扉の外に声を掛ける。

「牧野、いる?」
類の声に扉が開き、入ってきたのは小柄の少年。
否、少年のように男装をし、艶やかな黒髪を肩で切りそろえた少女、つくし。

類の父の片腕であった将軍の一人娘で、類の従者。
将軍の後を継ぐべき男子がないまま、早くに奥方が亡くなったため、将軍はつくしに剣を教えた。
つくしは8歳のときに邸にあがり、類の剣の相手と従者として常に側にいた。

「面倒だけど行ってくるよ。俺が行けば収まると思うから」
ちょっとそこまで散歩に行く…そんなのんびりした口調で告げた。


-side Tsukushi-

-本当に王子様
初めて類を目にしたつくしが抱いた感想。
主君である大公の嫡子は、ビー玉のような瞳と淡い色の髪を持つ、自分より遙かに美しい少年だった。

父に連れられ挨拶をしたつくしに、類は無反応。

-女の従者なんか要らない。

態度と視線で、そうつくしに告げていた。
吸い込まれそうな、だが精気のない瞳に、つくしの中の何かが弾ける。
腰にさげたレイピアを類に向けた。

「私を遠ざけたかったら、私に勝ってみせて。
私が必要ないくらいの腕なら、お側を去ります」

あれから10年近い月日は流れ…
未だつくしは、類の側にいる。
類は一度も、つくしに勝ったことはない。
それが類の本当の力ではないことを、つくしは既に知っていた。
知っていてなお…つくしは気付かないふりをする。
そうすれば、側に居られるから。
類に婚約者がいても、結婚が決まっていても、従者ならば一生側に居られる。

-そんな狡い考えを持っていたから…そう、きっとこれは天罰なのだろう。
あの頃より一回り以上大きなレイピアを手に、類の部屋へと急いだ。


-Rui&Tsukushi-

類の言葉に、つくしが唖然とした表情を見せる。
その表情が面白くて、つい吹き出してしまった。

「牧野、あんたの顔、面白い」
「面白い…じゃない! マイ・ロード。何言ってるの!」
つくしが敬語を使うのを厭うため、2人だけの時はいつもの口調になる。

「うるさいよ、牧野。
このままだと邸に火を放たれそうだし…
ま、ここは燃えてもいいけど、周りも迷惑しそうだしね。
邸の誰かが逃げ遅れても困るし。
周りに迷惑掛けちゃ駄目だって、いつも言ってるのは牧野でしょ?」

今置かれている状況を全く理解していないかのように、のんびりと言う。

「狙いは俺なんだから、俺が行けば終わるよ」
-それが一番、てっとり早い方法でしょ?
声に出さない言葉でそう言い出て行こうとする類を、つくしの声が止めた。

「駄目!マイ・ロード。突破口は私が開くから…
謀反のお二人は、私に任せて」
つくしを見つめる類の瞳は、穏やかだが、すべてを諦めきっている目。
最初に出会った頃と同じもの。

類の従者になって、2人だけでいるときは、その瞳になることはなかったのに…
思わず泣きそうになるのを堪える。

-類を殺される訳にはいかない。
かといって、類に肉親を手に掛けさせる訳にもいかない。
そう、これは自分の仕事。
従者である自分の…おそらくは最期の。

そんなつくしの言葉を全く無視し、類が言葉を紡ぐ。

「牧野。あんたは他の者と一緒に裏から出て逃げて。
司んとこでもあきらでも総二郎でも…
あんたならどこでも受け入れてくれる筈だよ」

-あいつらにあんたを渡したくはないけど。
本当は一番言いたい言葉を飲み込む。

「だから…!」
「命令だよ。牧野。屋敷から出て逃げて」
ドアの前に立ちふさがり、押し留めようとするつくしに最後の言葉を投げかける。

命令。
従者であるつくしには絶対的なもの。

類の些細なわがままを窘めたり、つくしと剣をまともに交えようとしない類を叱咤したり…
色々と類に意見するつくしも、滅多に言わない類のこの言葉には必ず従った。

尤も類からの命令はいつも同じ。
年頃になったつくしを気遣った類の母が、従者を辞めさせ自分の侍女にしようとした時。
つくしを気に入った司が、自国へつくしを連れて行こうとした時。

そして日に日に美しくなっていくつくしに、初めて類がその唇に触れた時。
驚いたつくしが、暫く類の前に現れなかったときに言い放った言葉。

-自分から離れるな、と。

その類が、初めて真逆の命令を下す。

「…その命令、今聞くわけにはいかない…」
「命令だと言ったはずだよ」

ゆったりとした口調だが、類の言葉は否定を許さない。
それでもつくしは引き下がらない。

「そう、貴方は言った! 離れるなと!!」
「牧野…」
「どうしても行くというなら、私も行く」
「死ぬよ」
「本望なれば」

つくしの瞳が、真っ直ぐに類を捉える。
どのくらいそうしていたか…

-負けたな…

自嘲気味に笑う。
つくし自身気付いていないが、そう、いつだって類はつくしには勝てない。

「牧野」
「はい」
「命令だ。離れるな、絶対に」
「Yes,my load.」
つくしは片膝をついた。


「邸には何人残ってる」
「20…いえ、動かせるのは15人程かと」
「ふーん…烏合の衆相手なら充分だね」

先ほどと同一人物とは思えないほどの精気に満ちた瞳を向ける。

「1時間でケリつけるよ」
「はい!」

つくしが嬉々として類に従う。
それを見て、類がくすりと笑った。

-牧野判ってる? 離れるなと言った本当の意味。

そのことをつくしが知るのは、もう少し後のこと…。








うひーー!! なんだこりゃあ!!
改めて読んでみると…赤面ものでございます…ハイ…。
これはブログ開始当初、1stで1,000hit御礼として書いたものだったのですが…。
全然、御礼になっておりませんね…(-_-;)
当時、ファンタジーパラレルにハマっておりまして…。
単につくしに類を「マイ・ロード」と呼ばせたいが為に書いたものになります。
↑やじきた学園道中記の影響、受けまくりですね(^^;)

で…何故これを「お友達登録限定文章」に入れているか…?
と、申しますと…。
実はこれには続きがあり、そちらがお友達限定記事となっているからです。
続きは全3話。
明日から1話ずつUP致します。
宜しければ、お付き合い下さいませ…<(_ _)>


拍手ありがとうございます♪
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