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真夏の一夜の夢 3

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加筆等はございませんので、ご了承下さい。





-side Rui-

舞踏会が始まり、類が静をエスコートして現れる。
次期大公妃を夢見る者達は、何とか類に取り入ろうとするが、完璧な静を前に強引に迫ることができない。
いつもならそれが有り難いのだが、今日は素直に静に感謝する気分にはなれない。

結局、舞踏会の直前になっても、つくしは現れなかった。
『従者』という身分のつくしは、この華やかな場所に立ち入ることができない。
つくしが元の『将軍令嬢』に戻れば問題はないが、その地位は高いものではないため、つくしの方から類に近づくことは許されていない。
そのためつくしは、会場の外で類を待っているのが常である。

いつもなら類に、不機嫌な顔はするな、とか、ちゃんと聞かれたことには答えろ、とか、口やかましく言い、類を送り出す。
それを「判ってる」「牧野は口うるさいな」と言いつつ、心のどこかで楽しんでいたのに、今日はそれがない。


「ご機嫌斜めね。類」
「…別に…」

あきらかにふてくされている様子の類に、柔らかい笑みを浮かべる。

「もうそろそろ『例』の発表をする頃なんだけど…その前に、類に渡したいものがあるの。
…あとで中庭に来てくれる?」

怪訝そうな顔をすると、「ちょっとしたお礼よ」とウィンクをした。



次々に類の前に現れる者達を適当にあしらい、挨拶に来た自分の婚約者だという娘に一瞥だけくれると、あとは司たちと話をし始める。
そうこうしていると、静の婚約発表の頃になる。
類は気づかれぬようそっとその場を抜け出すと、中庭へと向かった。

城内での賑わいが嘘のように、中庭は静かだった。
ほっと息をつく。
そんな類の前に、華やかな色の服が見える。
静が来ていたドレスとは異なる色。

-見つかると厄介だな…

向こうが気付く前に立ち去ろうとしたとき、その人物の顔を見て驚いた。

「牧野…?」



-Rui & Tsukushi-

つくしの姿は、普段は着ないドレスに、女物の薄い外套を手に持ち真っ直ぐに立つ。
淡いピンク色でシンプルな形のドレスは、かえってつくしの美しさを引き立たせている。
少し短めの髪はサイドを編み込みにしてあり、普段はしない薄い化粧も施されていた。

「マイ・ロード?」
「何してるの? ここで?」
「え…あの、静様に申しつかりまして…」

そう言って、手に持っているものを類に差し出す。
ドレス姿のつくしには似合わない、男物の外套と剣。

「なに…?」
「静様が、マイ・ロードがここに来たら渡すようにと仰いました…」

パーティ会場にいるせいだからか、つくしは敬語を崩さない。

「静が?」
「はい」
「…後は何か言われた?」

つくしは頭を振る。

「…で、牧野、あんたは何でこんな格好してるの?」
「中庭にいるのが見つかると、五月蠅く申す者がおりますので、今日はドレスを着るように、静様から申し使ったのですが…。
…似合いませんよね」

つくしの言葉に、類は静の意図を知る。
手渡された剣は、いつも類が使っているバスタード・ソードより短いノーマルソード。
外套の内ポケットが変に重く、少し動かすと、ちゃりんという音がする。

-これが、静が『渡したいもの』…か…

中々粋な計らいをするものだ、と、静に感謝する。

だがつくしは、黙り込む類の様子を肯定と受け取ったのか、少し悲しげに俯く。
そんな姿ですら目を離せない。

-見せびらかしたい。彼女は自分のものだと。
-誰にも見せたくない。彼女は自分のものだから。

相反する2つの思い。

「誰か、他にここにいた?」
「え? 誰も。不審者は見ておりません」

類の質問の意図を理解せず、本来の職務である従者として真面目に答えるつくしを見ていると、先ほどまでの不機嫌さが綺麗に晴れてゆく。

丁度その頃、中で歓声が上がっていた。
静の婚約の発表があったのだろう。
つくしが手に持っていた外套をふわりと着せ、その手を掴むと、厩舎へと向かう。

「あ…あの…」
「出掛けるよ、牧野」
「へ?」
「いいから」

そのまま足を早める。
目的の場所へ付くと、ゴテゴテした飾りを取り除き、腰に剣を穿き、自らも外套を羽織る。
厩舎から青鹿毛の愛馬を引き出し、鞍とはみを手早くつけると、ひらりとその背中に跨る。
そして、訳も判らず呆然とその様子を眺めていたつくしの腰を抱くと、そのまま類の前に引き上げた。

「マ・マ・マイ・ロード! 何を!」
「寒い?」
「え…いいえ…」
「そ、じゃあ行くよ」

馬の脇腹を蹴ると、勢いよく走り出す。

「マイ・ロード。ど…何処へ…?」
「街」
「へ?」
「今日は祭りがあるんだって。見に行こう」
「えええー!! だ…駄目です!!! 戻って…きゃあ…!」

つくしが顔を上げ、類を制しようとするのを、業と馬の腹を締め、がくんと速度を上げる。
急に早くなったことによりつくしの身体は、類の胸の中にすっぽりと収まった。

「…そのまま掴まってて。じゃないと落ちるよ」

引き返す気など毛頭無い類の様子に、つくしも諦め、素直に従う。



そう、これは夢。
真夏の一夜の夢のようなもの。
夢なればこそ、儚くも華やかなれ…


2人を乗せた青鹿毛の馬は、軽やかに夜道を走り抜けていった。







うひーーー!!
…もうムンクの叫びポーズで倒れ込みそうです…。

このときの目的は…
はい、類を青鹿毛の馬に乗せたかっただけでした。
類→王子様→白馬 のイメージの方が多いかと思いますが、私個人的には類が乗るのは青鹿毛。
ちなみに総ちゃんは芦毛か白毛、あきらくんは栗毛。
そして司は…国王号!(ラオウの愛馬)
…ではなく、青毛かな…と思っております。
お話のタイトルは、大好きなレベッカの曲『蜃気楼』の歌詞から頂きました。
音楽は こちら からどうぞ…
歌詞サイトへとびます。貼付けに問題がある場合には撤去致しますので、ご連絡下さい。

このお話は「離れない、離さない」と同じ設定ですが、時代は逆行しております。
イメージ的には舞台にもなっているミュージカル映画『The Last Five Years』の女性側の方かな…と。
実はこの前、類とつくしがもっと若い頃のお話も考えてはあるのですが、未だ書いてはおりません。
いつか書く…? かもしれませんが、そのときには『ムンクの叫び』にはならないようなお話にしたいものです…。

4日間、お付き合い下さり、ありがとうございました。<(_ _)>


拍手ありがとうございます♪
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Comments 2

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2018/02/06 (Tue) 22:55 | EDIT | REPLY |   
星香

星香  

鍵コメ「ない」様

ご訪問&コメント、ありがとうございます♪
お返事が遅くなり、申し訳ございません。

“マイ・ロード”の呼びかけ、気に入って頂けましたか?
従者というとつい男性を思い浮かべるのですが、護衛として女性が男性に使えるがいうのは結構好きなシチュエーションだったりします。
翻訳機にかけると“My load”は“閣下”となるそうなのですが…
ここでは唯一無二の相手への呼びかけ、的な意味合いでしょうか…?

続きというか…これは“遡り”なので、続編は“過去”に向かっています。
ネタは…またいつか…??

お付き合い、ありがとうございました。<(_ _)>

2018/02/08 (Thu) 18:50 | EDIT | REPLY |   

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