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駄文置き場のブログ 2nd season

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In The Forest 79

第79話


「話がある」
入り口近くに居た司が、足早につくしに近付く。
気付けば司の姿はつくしの目の前まで来て居た。

「な…なに…?」
「………………」

見上げるように司の方に顔を向ける。
つくしが促しても、司は黙ったまま。
僅かに眼を細め、つくしの顔をまじまじと眺める。


「あ…の……?」
「………………」

柔らかく、慈しむようにつくしを見つめる眼。
それはかつて、つくしを見つめていた司の眼、そのもの。
知らずつくしの顔も火照ってくる。
誤魔化すように別の話題を振る。

「…話しって…?
…あ、その…和解のことだったら、大丈夫だよ。
弁護士を通じて…」
「そんなのはどうでもいい…!」

吐き捨てるように叫ぶと、華奢なつくしの身体を抱きしめる。
突然の司の行動に、驚き身動き出来ないつくし。

「そんなのはどうだっていいんだよ!」
「ど…みょうじ…?}
「牧野。お前が望むんなら、裁判に負けても誰に頭下げても、何したって構わねぇ。
お前に許して貰えるんなら…」
抵抗のないつくしの身体を、尚一層強く抱きしめる。

「…道明寺…? 何言って…」
「愛してる」
「……え……?」

その発言に驚き、抱き竦められた身体を離す。
司も少しだけ、腕の力を緩めた。
つくしと司。至近距離で視線が合う。

「愛してる。お前だけだ。牧野」
「道明寺…だって…」

真っ直ぐつくしに向けられる視線に耐えられず、それを反らしながら言葉を続ける。

「だって…あんた…今…結婚して…」
「あいつとは別れた」
「え…?」

思いがけない発言に驚き、再び視線を司に向ける。
つくしの眼を見ながら、司が口を開いた。

「昨日、正式に別れた」
「うそ…? だって……」

先日、司が倒れた時に西田から離婚協議中だと聞いたばかり。
あれから大して時間は経過していない。
つくしも仕事柄、離婚がどれだけ大変かを知っている。
子供は居ないので親権問題や養育費はないとしても、財産分与など、細々したところで互いの主張は異なってくるのだから。
ましてや司の結婚は、個人のことだけではない。
相手の家との業務提携、資本持分等、企業に関わることも含まれてくる。
とてもこの短期間で、すべてを解決出来るとは思えない。

「嘘じゃねぇ。全部解決済みだ」
「な…んで…?」
「当たり前だろ!?」
再び司がつくしを抱き寄せる。

「牧野。俺はお前しか要らねぇ…!
今回の件で、類に土下座しろって言うんならしてやる。
家を捨てろって言うんなら、何もかも捨てたって構わねぇ。
お前だけなんだよ。欲しいのは…!」

もう二度と離さない、とでも言うようにつくしを抱く。
情熱的に、一途に思いをつくしにぶつける処は、昔とちっとも変わらない。
司から香る、高そうなコロン。
それも昔、つくしが感じたものと同じ。
馬鹿で、我が儘で、自己中心的で…
そして、どうしようもない程に好きだった司。

その司が今、目の前に居る。
ほんの少し、手を伸ばせば触れられるほど近くに。
あの時…
司がつくしを忘れたあの時の哀しみ。
この手を伸ばせばそれが今、報われるというのだろうか…?




夢の中でつくしは追い掛ける。
これは夢で、現実ではないと判っているのに。
幾ら探しても探しても、求める人は見付からない。
手を伸ばす先に、直ぐ近くにいるというのに…
疲れ、倒れ込み、動けなくなった処で声がする。

-こっちだ…

誰かがつくしの右手を掴む。
深い森の中、つくしの手を引く誰か。
ずっと求めていた『あの人』
手を引かれたまま歩いていると、見えてくる光。

-あそこが出口だ。
少し前を歩くその人が振り返る。
出口の光に反射して、顔が見えない。


-私の手を引く、貴方は………司………?

つくしの手が、ゆっくりと動き出した。







-遅いな…

先に行っていてくれ、と言われ、エレベータ近くまで来たものの、何となくその場で待ち惚けていた類。
捜し物、といっても、待合室はさして広くはない。
直ぐに見付かる筈なのだが…
忘れた場所が違っていて、見付からないのだろうか…?

しばし考え、元来た道を戻る。
法廷隣の控え室に近付くにつれ、話し声が聞こえて来る。
その声には聞き覚えがあった。

『だって…あんた…』

-牧野…?
類の足が止まる。
つくしの他に誰か居て、何かを話している…?
相手は…?

『あいつとは別れた』
『え…?』

-司…?

相手が司であることに驚き、そろりそろりと足を進める。
開け放たれたドアの間から見える、2人の姿。
司がつくしの身体を抱きしめ、つくしは呆然とそれに身を任せている。
遠い過去、司の記憶が失われなければ、きっと嫌と言う程見てきたであろう光景。
それが今、現実として類の目の前に突き刺さる。

つくしの手が動く。
-司に向かって…。


それ以上見ていられず、類は踵を返すとエレベーターへと急ぐ。
ここに居る事。それが只、苦痛でしかなかった。


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